先日ある患者さんが、私はいつも電動歯ブラシで歯磨きをしているけれども、それで大丈夫か?と言う質問がありました。あなたは電動歯ブラシを普段使っているでしょうか?使ったことがありますか?もしくは全く経験なし、とか。
電動歯ブラシはとても良いものですが、使い方を間違えるともったいないことになります。そのことについて少しお伝えしていきたいと思います。
幼稚園児位の小さいお子さん、本人が電動歯ブラシを使っていることをたまに見受けます。これはちょっと無理があるかもしれません。どうしてでしょうか?それはおそらく正しく使いこなすのが難しいからです。そして勘違いしてしまうからです。電動歯ブラシで磨くと、そのものすごいパワーによってすごく磨けたような気分になってしまいます。そして時間も短縮できると思っていますので、本来なら3分ぐらいやるところを、30秒でできると錯覚したりするのです。音も結構快適な音が鳴って、振動も確かに体に感じるので、いかにもきれいになったと思い込んでしまい、それが習慣化していくと、実は歯と歯の間や歯茎の際の難しいところは意外にできていないまま、長い期間放置することになります。そしてその放置期間の間に虫歯ができていたり、歯茎が炎症していたりということが起きているのをたまに見ます。
すなわち、電動歯ブラシは広い面を一気にきれいにするという意味においてはとても効率的です。汚れもしっかり落としますし、手の動きでは不十分な場合でも落とすことができたりします。ですが、一方で、歯と歯の間など複雑で入りくんだ場所、こういう場所には、電動歯ブラシの歯ブラシの先がなかなか当たらないのです。もうすごい勢いで歯ブラシの先が振動していて、それが歯と歯の間の入りくんだところにうまく入り込んで当てるのは難しいのです。それはむしろ普通の歯ブラシを手で持ってやったほうがきれいになっている確率がとても高いです。そういう観点から考えて電動歯ブラシを使うのであればいくつか工夫が必要かと思います。
その一つとしては、例えば朝は電動歯ブラシを使う。昼と夜は普通の歯磨き、歯ブラシを使う。そして特に夜なんかは手で持った歯ブラシでよく歯と歯の間、歯茎の際などおそらく電動歯ブラシで手の行き届かない難しい部分を丁寧に仕上げる。というようなことを意識することです。
あるいは別の方法として、まず電動歯ブラシで全体を磨く。その後念入りに難しいところだけ手で持って普通の歯ブラシで磨いて仕上げをする、と言うような2段階で構える。
などが考えられます。
いろいろな患者さんから質問されるのですが、そのような話を聞いていると、どうして患者さんが電動歯ブラシを使いたがっているか、それは今自分の磨き方はまだ不十分でちゃんとできてないのではないか?だからもっと丁寧にしっかりやろう。そのためにより高度でレベルの高い方法として電動歯ブラシを使った方が良いのではないかと思っている、ということなのです。このような場合は割合安全です。というのもよりきれいにしよう、自分はまだまだ足りないと油断していないからです。
一方で、とにかく時間を節約したい、簡便に済ませたいと思っている人は危険ですので注意が必要です。ですが、やはり多くの場合、自分の歯をしっかり守ろうと思って、電動歯ブラシを手にしていることが多いです。(それは人からもらったりとか、与えられた場合でないと言う状況の中です。というのも電動歯ブラシってちょっとしたプレゼントとかでもらったりすることもあるものなので、自らの意思で電動歯ブラシを使ったほうがいいんじゃないかと言う考え方で始めているわけでもない人も意外にいたりするわけなんです。特に今現在電動歯ブラシはとても安く売ってるものもあります。ちなみに私はこのような安いものはあまりお勧めしていません。ほとんど意味がなかったり、逆効果であったりするからです)話を戻すと、電動歯ブラシでしっかりメンテナンスしていこうと自分で思っているのですが、やはり人間ですので、だんだん油断ができてきて、ある程度機械でしっかりやってるからまぁ大丈夫だろうという錯覚が起きてきて、その錯覚がやがて大きくなり、電動歯ブラシだから、3分やらなくても1分でも大丈夫だろうとか、まぁしっかり昨日夜やったから、朝はまぁやらなくても大丈夫じゃないかとか、どんどん甘えていくわけです。知らない間に大きな誤解のレベルまでなっていくわけです。
以上まとめとなりますが、電動歯ブラシは歯科医院で売っている専売のものを使われることをお勧めします。何がいいかを選択するのはなかなか一般の方では難しいと思うので、ご自身のいかれている歯科医院でどれが良いのか、また使い方のアドバイスも受けた方が良いでしょう。多くの場合、使い方はその箱の中に説明の紙が入っていることが多いです。そして電動歯ブラシだけではなく、手で持って普通の歯ブラシで磨く仕上げをする。さらにいうと、糸ようじやフロス、歯間ブラシなども使うということお勧めします。このような事は特に歯科衛生士が詳しいので、定期クリーニングを受けている方は、歯科衛生士にアドバイスを聞くことがとてもパーソナルな情報が得られることになります。ご自身に合った状況のアドバイスをもらってください。