歯を治療した際に、かぶせものをつけることがあると思います。今までに歯の治療を受けたことがある人であれば、お口の中にいろんなかぶせものが入っているのではないでしょうか。そのかぶせ物は金属であったりとかセラミックであったりいろいろなタイプがありますが、そのかぶせものを歯科専用の接着剤でくっつけていると思います。
さて、インプラントの場合ですが、かぶせ物のくっつけ方が多少違うのです。インプラントの場合は歯茎の中に土台の根っことなる部分があり、それはネジのような形をしています。その土台の上に歯の形をしたセラミックなどをくっつけるのです。1つの方法としては、接着剤でくっつけるということです。これは先ほど述べた一般的なくっつけ方とほぼ似ています。
ですが、ここには様々な問題点があります。何故か。それはインプラントのかぶせ物の場合、様々な状況の中で年月が経ち、中のインプラントのネジの部分であるとか、中間部分の接続のネジの補助構造部分であるとか、様々な所が弱ってきてメンテナンスをしなければならない、もしくは1部の部品を交換しなければならない、と言うようなことが起きるのです。
車で例えて言えば、タイヤを新しいものに変える、ブレーキパッドを交換するといった感じでしょうか。そうなると、歯のかぶせ物の接着剤は最も強いものでくっつけてしまうと、いざ中の構造部分をメンテナンスして交換しようとする際に、上のかぶせ物だけ外して中の構造をいじりたくても、それはうまくいかないわけです。そうなると、上のかぶせものを壊して外して、中の構造をメンテナンスで直し、そして改めてもう一度、上のかぶせものを作るというとても複雑な作業になってしまいます。
そのため、上のかぶせ物をくっつける際には、従来のような強いセメントではつけずに2番目3番目程度の強さのセメントをあえて使うと言う方法があります。このようなセメントを使うことにより、10年経った時にもしメンテナンスが必要で外したいとなった場合に、上のかぶせ物だけを外すわけです。そして、中のメンテナンスをしてまた戻してやると言うことです。
ところがこの2番目3番目程度のセメントでつけた場合、いろいろ問題があるのです。その問題とは、まずインプラントには相当強い力がかかり、グッと思いっきり噛むわけでして、かぶせものが外れてしまうかもしれないわけです。セメントがだんだんと疲労していきますので、セメントが壊れ上のかぶせものが外れてきて、もう一度付け直ということが起こりえます。それがたまにとか、例えば5年2回位ならまだ良いのですが、4ヶ月に1回とかそのようなことも考えられるわけです、それは相当強い力かかるので、その人その人によってその頻度も何とも予想が難しいです。ですので、このような仮付けに近いような付け方が本当に良いかどうかというのが悩ましいところなのです。
次に、もう一つ、このセメントでつける方法には問題があり、セメントと言うのは多少余剰が出てはみ出るわけです。インプラントの場合、かなり精度を要求するので、この余剰のセメントがインプラントのそばの歯茎の溝にほんの少しだけ残っているために、歯周病のような歯茎が腫れてくるようなことが起きるのです。
この歯茎が腫れてくるような状態のことをインプラント周囲炎と専門的な言葉で言います。インプラント周囲炎になる可能性が多分にあるのです。
ですのでこのインプラント周囲炎を避けるためにセメントをつけないで、インプラントに上のかぶせものをつける方法が実はあります。
この方法は言葉で説明してもかなりわかりにくい話なのですが、インプラントの土台部分のネジと、上のかぶせ物の中間部分に、それぞれをジョイントさせるための中間ネジが存在し、それでつないでしまい、セメントは使わないと言う方法があります。この方法は最近ではよく使われている方法です。しかし、この方法にも実は弱点があります。それはこの中間ネジを締めるための穴がどうしても必要なのです。そのために、セラミックの1部に道が作られており、人によってはその道の部分が気になってしまうわけです。前歯の場合はそのネジ穴の道は裏側にあるので、あまり目立つ事は無い場合が多いですですが、奥歯の場合は噛み合わせの上の部分に来るので、口を開けてみようと思えば見えるわけです。他人からはわかりにくいですが、自分で、じーっとしっかり見れば、なんとなく、あーここに何かあるなと言うのはわかります。
そうなると何を優先させるかと言うことになるんですね。インプラント周囲炎になるかもしれないけれども、とにかく見た目を最大限優先したい人、逆に、インプラント周囲炎などにはなりたくないので、セメントを使わずに裏側や目立たないとこであれば、多少のネジ穴が存在しても良いと思う人。
現在では、多くの場合、中間ネジを利用した固定ができるのであれば、それを第一選択とするのが一般的です。それはネジ固定タイプは何かあったときにメンテナンスがやりやすいからです。