前回インプラントのお話を書いた際に、約2ヶ月ほど歯を抜いてからは時間を待つと言うことを書いたかと思います。多くの場合はこのようになると言うことをお伝えしたと思います。ですが、その2ヶ月以内にやる場合があると言う話を今回は少し改めてお伝えしたいと思います。前回で全て話してしまうと話があまりにもややこしいので、そうではない場合もあると言うことをちょっとお伝えしていきたいと思います。
そもそもどうして2ヶ月待つのか?かつ2ヶ月がちょうど良い間隔であり、6ヶ月は待たないと言うことを前回はお伝えしました。その最大の理由はちょうど2ヶ月後が細胞活性が高く新生血管ができやすく、骨や歯茎にインプラントが最もよくくっつくであろうと言われているということが文献的にわかっているからです。これは極めて重要な話です。ですが、実は他にもやり方があって、それを今から話します。
抜いた当日にインプラントをする場合です。これが適している場合が少ないですがあるのです。少ないと言うのは、おそらく私の経験上では、100例中2症例位それぐらいの割合だと思います。この場合になるのは主に前歯の場合です。奥歯でもあるのですが。前歯の場合は歯を抜くと骨が一部とても吸収するところがあります。その吸収を抑える方法がいくつかありまして、それは歯を抜いた当日に、その歯の周りにある一定以上の大きさのものをそこにキープするために入れ込んでしまうと言うことです。それはインプラントをすると言う事なのですが、そうするとインプラント自体が枠組みとなり、骨の吸収を抑えてくれます。ちょっとわかりにくい話ですいません。もしくはこれもっとわかりにくい話で大変恐縮なのですが、歯を抜くんだけれども、歯の10分の9ほど抜いて10分の1だけ歯をわざと抜かずに残すと言うテクニックもあります。骨が吸収しそうなその部分の歯をかけらほど少しだけ残して、わざと抜かないで残しておくのです。そうすると骨が吸収してこない、倒れ込んでこないで、その場所を確保しつつのインプラントを入れておけば、非常に安定的な枠組みとなると言うテクニックがあるのです。このテクニックを使うのはそんなに多くはないです。1年間に2人ほどそれぐらい、少ない方法です。ですがとてもありがたい方法です。もしこの方法を使わない場合、その人はどうなるかと言うと、骨を増やすための何らかの対応をしなければならないからです。ちなみにその対応と言うのは、チタンの膜などを使って、歯茎の中にインプラント以外にそれを一時的に埋め込むと言う方法を用います。この膜を埋め込んだ方法、とても微妙な方法で難しいのです。治療の技術を要します。チタンの膜を歯茎の中に埋め込み、そのチタンの膜が歯茎の中で勝手に動かないようにとても細かい作業でピンやネジなどで固定していき、うまく縫い込むわけですこれが歯茎が安定する4ヶ月位の間に間違えてぎゅっと押してしまったり、食べ物ががつっと当たったりしてチタンの膜がずれたりすると失敗する可能性もあるわけで。
話を元に戻しますが、2ヶ月待たずに抜いたその日にすぐインプラント入れる方法、抜歯即時といいます。この方法は一見すると、患者さんにとってはタイムラグが少ないので、とても良いような方法に聞こえるかもしれませんが、どんな場合でもできるわけではないので、これが本当に適しているかどうかをよく判断する必要がありますし、先程述べたように多くの場合はこれには該当しない場合が多いです。ですので、10症例あって1症例あればまぁ多い位だと思ってください。このことを今特にお伝えしておきたいのは、患者さんによってはいろんなインターネット等の情報で抜歯即時の話をどこかで仕入れてきて、そういう方法でやってほしいと依頼してくる方がいるのです。確かにその方法がちょうどあなたに合っているのであれば良い方法なのですが、多くの場合はそれ、ほとんど合っていないのです。そしてネットの情報と言うのは、自分にとっていいなぁと思ったことだけどんどん読んで仕入れていきますので、それがあたかも普通であり、多い方法であると誤解してしまうことがあるからなんです。全体の中で何が本当にポピュラーなのか、また自分に合っているのか、これらを判断することはとても難しいのです。ですから相談をして決めていくことが大事です。