前回の話に続き、抜歯を避ける方法に関して話をしていきたいと思います。
専門用語でIPRという言葉があります。これはかなり難しい言葉で矯正をある一定以上やっている歯科医師、もしくは歯科衛生士等であれば知っている言葉です。ですが、一般の方にはちょっとわかりにくいので、もう少し噛み砕いてお伝えしていきます。歯と歯の間を0.3ミリほど削るということです。
もし歯と歯の間を0.3ミリほど削ると、0.3ミリの隙間ができるわけです。そうするとその分スペースができて重なってる歯を動かしやすくなります。ということは、歯を抜くよりもその方が合理的であると言う場合があるわけです。
ですが、0.3ミリですので、それだけでは足りない、たった0.3ミリでこんなに重なってるのに歯が治るのか?ということもありますですので、それは1カ所だけではなく、6箇所位とか10箇所位この作業を行うこともあるわけです。そうすると全体としては2から3ミリの隙間ができますので、これらを有効に使って引っかかりをひもといていけばきれいに並ぶと言う方法です。これで抜かないのであれば、とても良い方法の1つであると考えられます。
では、歯と歯の間を0.3ミリ削っても良いのか、大丈夫なのか?ということを気にされる人も出てくると思います。歯の表面には1ミリから2ミリほどのエナメル質と言う層があります。これはとても硬い層で、この層があればはとても虫歯になりにくいのです。ですので、このエナメル質のある範囲内で安全な範囲内を多少だけ削るということなのです。逆に言うと隙間を作るために歯を2ミリ削ったと言うのではちょっとだめな場合も考えられます。
だめな場合とはどういうことかと言うと、歯の神経が生きていれば、削る量は先ほど言った0.3ミリとか0.5ミリのような範囲になるかと思います。ですがもしその歯がもう既にかぶせ物がしてある、神経がないような歯であれば、1ミリ削っても問題は起きないわけです。ということは、全体の状況を考えて、どこをどれぐらい削って、隙間を作るかと言う治療計画になります。そして引っかかりを解くために合理的な場所と量を考えてこの削合を行っていくわけです。
どうでしょうか?あなたは削ると聞いて、ちょっと嫌な気もするかもしれません。ですが、どちらかの選択なのです。IPRと言うこの手法を用いるのか、前回にお話しした小臼歯を抜歯するのか。そうすると患者さんにどうしたいかって言うことを聞くのですが、大抵の場合はあまり抜きたくないから、0.3ミリほど角を丸める、IPRと言う方法を選択される場合があります。ですが、それでも小臼歯を抜歯してくださいと言う方も、実はちらほらいるのです。
どうしてそれでも小臼歯を抜歯してくださいと言う人がいるのでしょうか。それはやはりちょっとでも前に出ているのが確実に下がったほうが良いのではないかと思っているからと思われます。このようなことから人によってどのように物事を捉えているのか、感じているのかが、個人差がかなり激しいということです。ですので、担当のドクターとよく相談してどちらを選択するのかは考えていく必要があります。もちろん診断的に片方しか選べない場合もありますので、そのような場合にはそれを選択する可能性が高いです。
ちなみに、このIP Rと言う方法は最近とても増えてきている方法です。昔からあった方法なのですが。その理由として考えられるのは、マウスピース矯正の普及が1つにはあると思います。マウスピース矯正はこのIP Rと言う方法と相性が良いからです。また昔は、ワイヤー矯正は一般歯科の先生でやっている方が少なく、矯正だけを行う歯科医院で矯正を行っている場合には、一般歯科治療の一部にあたるIR Rを得意としていないためにほとんど行われていなかったと言う実情があります。