先日あるお母様から5歳のお子さんに関して矯正のスタート時期はいつが良いのでしょうかと言う質問がありました。これに関しては今まで私がここに何度となく書いていますが、理想は小学校1年生の4月です。このお子さんはお姉さんが小学校2年生ですが、お姉さんと一緒にスタートすることとなり小学校1年生となるまでは練習でお姉さんと一緒にやろうと言うことになりました。すなわち本格的なスタートは小学校1年生で1年間はお姉さんの横にいてちょっとだけお姉さんと一緒に練習してみようと言うような状況です。
前回に話した小学校1年生4月がスタートとして理想であると言うのは、子供のモチベーションのコントロールにおいて理想的であるからだと言う理由を伝えました。今回は別の理由に関してお伝えしていきたいと思います。
それは何かといいますと、体の成長と関係があります。矯正治療をすると言う事は、悪い習慣により顎がずれたり、歯が曲がっている、筋肉のバランスが悪い、筋肉が弱い、呼吸が間違っている、口をいつも開けている、鼻で息ができない等を是正することではあるのですが、その是正を通じて骨の歪みも一緒にできれば治していきたいわけです。
それを考えた際に、実は顔の真ん中あたりのことを中顔面と言いますが、この中顔面が出来る限り球体の形に成長を促進することがとても成功のカギです。顔の真ん中辺、中顔面が一番成長を促進できるのは、小学校1年生から3年生位なのです。この時期が成長のピークで最も成果が出やすい時期なのです。それを過ぎるとあまり今度は成長の余地がなくなりあまり形を変えるのは難しくなります。すなわちはが並ぶ元となる土台の骨の形、顎の形を出来る限り理想的な球の形にしたいのですがそれがこの時期だと言うことなのです。速すぎても遅すぎてもだめなわけでは無いのですが、最も成果が上がりやすい時期と言うことです。特に東洋人の場合、中顔面の骨の成長が弱いと言うことが近年ではよく指摘されています。
以前映画で阿部寛主演のローマのお風呂の映画がありました。この映画の中では東洋人の顔を平たい族と表現していました。顔が平べったいと言うことです。そして西洋人は横顔から見たときに前後的に長い立体の顔をしています。一方、西洋人の顔は球に近い形なのです。この平たい顔では立体の球にはあまり近くないですよね、このような状態にはならず、横顔から見たときに立体感のある球の形の顔になってほしいのです。
実はこの形に究極的に近づけたい場合にはもう生まれてまもなくからできる努力があります。母乳が終わった頃にすぐに前歯噛みを始めることです。離乳食は食べないです。よく考えてみてください。離乳食と言う商品が世の中に出回っていない昔には誰も離乳食は食べていないのです。大人が食べているものにほぼ近いものを食べていたのです。子供だから柔らかいものを食べさせないと食べられない、歯がないから噛めないのではないか、と考えがちですが、実は昔は大人と同じものを必死に1歳児が前歯2本程度もしくはその周りの土手で噛んで食べていたのです。これをひたすら行うと立体の丘に近づいていきます。
話を元に戻しますが、体の成長を考えてどの時期にスタートすると良いかと言うことでした。もしあなたのお子さんがその時期を過ぎていた場合どうすべきかと言うことに関してお話ししますが、過ぎてしまったから全くダメと言うことではありません。その中で出来る限り良い状態になることを考えます。専門家ではない皆さんから見た場合、見た目で言えば十分に治っていると思う程度まで改善はできます。ただ我々専門家から考えると土台が十分に良い形になっているか、呼吸や舌の位置が正しい位置になっているか、などのこだわりを考えた際には、やはりどうしても差があると言う仕上がりになっています。遅いと言う事は無いのですが、もし正しい知識を持っていて理想の時期にできるのであればそれを行うべきです。もし時期を過ぎていれば可及的速やかに対策を打つべきです。そして足りない部分をどのように出来る限り補うかを考えます。
また時期が遅くどうしてもズレが大きい場合には歯を抜いての矯正治療になる可能性があります。歯を抜いてやることが悪いわけではありませんが、多くの方ができれば抜かないで治るならそうしてほしいと言う希望が多いことも事実です。すなわち、きれいにしたいと言う気持ちもあるししっかり治したいと言う気持ちもあるのだが、抜くのはちょっと心配かなと言う気持ちもあるのです。人間だからいろんな気持ちがあるのが普通だと思います。その中で最も自分らしい生き方はなんだろうと言うことを検討していくことになるかと思います。