Tag Archives: インプラント

インプラント手術治療の直後における注意点について

2023年8月13日

こんにちは、先日インプラント治療を終えてその直後に、患者さんにいつも治療後に説明しているのですが、その時、様々な質問があり患者様から、とても重要な内容を含んでいるかと思いますので皆さんと共有したいです。

私は、インプラントの埋入手術が終わった直後に患者さんに直接、プリントを用いて、術後の注意事項に関して説明しています。

その中でタバコを吸わないようにと言うことが書いてあります。ちなみにこのタバコを吸わないと言うことに関しては、術前のインプラントをやるかやらないかと言う段階から既にタバコを吸っていますか?タバコを吸っているとインプラントには影響が出ますよ、さらに自分の普通の歯にも影響が出ます、自分の歯自体を歯周病など進行させる可能性があり禁煙をしたほうがいいですよ。と言う話をもちろんしています。

さて話は戻りますが、普段その方はほとんどタバコを吸う事は無いのだが、お酒を飲むとその時に4.5本吸っていると言うことを話されたのです。本人の自覚としては普段ほとんど吸っていないのだからタバコを吸っていないと言うことで問題ないであろうと思っていたらしいのです。で、このお酒を飲む機会も週に2、3回ある時もあれば全く飲む機会がないと言うこともあり、かなりまちまちだと言うことなのです。

お酒を飲むこと自体はさほどインプラントに影響与えると言う事はありません。手術直後にお酒を飲んだらどうか?これはお酒自体がインプラントに何か影響を与えると言う事は無いのですが、一般的にお酒をたくさん飲めば血流が良くなり出血がしやすくなったり、人によっては痛みをより強く感じる、あるいは酔っ払ってしまいインプラントのところを知らない間に触っていた、などと言う不足のトラブルを避けるために、お酒は当日飲まないでください、と言うことを伝えてます。そして次の日はどうかといいますと、まぁほぼ同様で飲んだからといって悪い影響が出るわけではありません。ですが安全を期してたくさんは飲まないでねと言うことなのです。

そしてタバコに関しては、4本5本であったとしても禁煙をぜひともしてほしいです。せっかく入れたインプラントが長持ちするのか、早期に脱落してしまうかもしれない、と言う差があるのです。
ここで、どうしても患者さんにしてみれば気になることが、多少なら大丈夫なんじゃないか? 1日に3本なら大丈夫なんじゃないか? 1週間にいっぺんぐらいだったら大丈夫なんじゃないか?と言うような感覚を持っている方が多いようですが、もう今日から禁煙してください。全身の為にも良いですし、何より自分の大切な歯をもうこれ以上失うのは寂しいです。ぜひとも一緒に頑張りましょう。

またインプラントの治療をする直前には必ず禁煙してくださいと言う事は念押しして言っています。で、そうすると患者さんはやっぱり頑張るわけですね、皆さん。この機会にせっかくだから頑張って禁煙して自分の歯を守っていきたいし、内科の先生にもそうしろとずいぶん言われてきたから、この際頑張ろうと、なっている方が多いです。ですがインプラントの手術が終わると最初は痛かったり腫れたりするんじゃないかと心配して、禁煙をがんばっています。

ですがインプラントの手術が十分にうまくいくとほとんど痛くないのです、実は。そうすると患者さんは思ったよりも全然痛くないし腫れなかった、よかった。そして人によっては油断してしまい2週間ぐらい経って縫ったところの糸を取った日以降、タバコを知らない間に吸っていると言う方が過去にいました。そして確かに数本であればその時には一見、影響が出ているような感じにはならないのです。だからこそ怖いのです。影響がはっきりと目に見えない、また痛みも出ない、だからこそちょっとぐらいなら吸ってもまぁいいかとなり、リスが数年後例えば5年後被せたところがなんとなく緩くなったり、歯茎が腫れやすくなったりと、このようなことが起きている人を見ます。もったいないです。

ですので、どうか私たち一緒に頑張りましょう!

woman dentist take implant tooth and touch tooth on the blue background

インプラント手術直後の注意点、食事に関して

2023年8月10日

インプラント直後の食事をどうしたらいいのか?このような話はよくある気になる話題かと思います。

流動食にする、飲み物だけにする、柔らかいものを気をつけて食べる、反対側の安全な場所だけで噛む、などと言う話があります。確かにそうです。人それぞれ状況によって違いますのでもう少し話を進めていきたいです。

インプラントの手術の直後はそのインプラントを入れた場所は歯茎が完全に閉じて縫ってある場合もありますし、そうではなくキャップが少しだけ歯茎の上に飛び出ているような状態で縫ってある場合もあります。現在の手術では後者の方が割合は多いです。

当院でも多くの場合後者の状況になります。このキャップが飛び出ているところを、積極的に噛んで行くと、それはインプラントにとっては良くないことです。ただこのキャップと言うのはそんなに大きいものではなく歯茎の上にほんの少し2ミリ程度飛び出ている程度のものであり、食事をしてそのキャップの上でしっかり噛むと言うことはできなくなっています。

ですが無理矢理噛もうとすれば噛めない事は無いわけです。相手の歯に当たっているわけではないので、確実に噛むことはできないのですが、多少の咀嚼の補助の役割ができる程度は、当たっていく可能性があるわけです。ですがインプラント手術をやった直後に、安静に確実に落ち着くまでは出来る限りここでは噛まない方が良いのです。

ではその期間はどれぐらいかといいますと、以前では数ヶ月と言われていましたが、現在の最新の様々な技術等を勘案しますと2週間まずは安静状態が確保できればかなり安全であるといえます。

これは初期固定と言う言葉があり、早期に骨や歯茎と安定した状態が確保できれば、その後はほぼ問題が起きない、その後は緩んでいかないと言う実験データがあり、それに基づいていくと、最初の2週間位を気をつけたいわけです。実際問題、多くの患者さんはやはり心配なのでそこで積極的に噛むようなことをする人はあまり見受けません。

ただやはりこれ治療がうまくいくと、多いことなのですが、あまり痛くないあまり腫れても来ないと言う状況で最初はおっかなびっくりしているのですが、だんだん安心して自分がインプラントの手術をしたことを忘れる位気楽になってしまうのです。そしてうっかり噛んでしまうということがあり得るわけです。そうすると余計な刺激が出てインプラントに無理な力の負荷がかかりインプラントのくっつきを壊してしまうことも可能性としてはあります。

またうっかりではなく無意識のうちに舌がその部分を押していると言うことをもあります。ただこれもやはり先ほど述べたように歯茎から飛び出ている部分は2ミリ程度ですのでいくらベロで押してもなかなか強い力はかからないのですが、その人のお口の中の状況によっては3ミリ4ミリと飛び出ているキャップになっている場合もあります。そのような状況になるとやはりを押されやすくなっているので充分な警戒が必要であることもあります。

またちなみにこのキャップを歯茎の上に2ミリほど出すような形でやる後者のパターンと言うことを書きましたが、前者の場合はキャップを出さずに全く食物と当たらないような状態にすることが可能なわけです。

ですがどうして後者のように出すような方法を選ぶのか?このどちらを選ぶのかと言うのは手術をするドクターが判断をしています。最初から予定で私は決めていますが、手術をしたときの骨の硬さや歯茎の状態様々な状況を鑑み最終決定を行っています。それで十分な安定感を得られると言う状況判断があれば、多くの場合はそうなのですが、歯茎の上に2ミリほどキャップを出すわけです。もしこれを当日にやらない場合は、もしくはやれない場合は、後日キャップだけのための治療が必要になるわけです。キャップを外に道を作って出すために麻酔をしてもう一度治療を行います。このキャップを出す治療はそんなに時間もかからず麻酔の量も少なく対して患者さんにとっては負荷のかからない治療ではありますが。2回やるということが回数が増えてしまうと言う点と、このステップをするために薬治療期間としては2週間から3週間ほど伸びると言うことが考えられるのです。

ですのでできる限り後者の方法を選べるような手術が出来るような戦略を最初から考えています。

最後にまとめますが、最初の二週間が大事です。

Young woman with implanted teeth on color background, closeup

インプラント手術直後の出血に関して

2023年8月6日

こんにちは、インプラント手術治療直後に出血はどの程度するのか?気になる方も多いと思います。先日多少出血したために問い合わせがあった人がありました。このことに関して少しお話をしたいと思います。

まず、手術直後に出血が全く止まらないと言う事はないです。十分に血が止まっているかを確認した上でその日の治療が終わりますので。でそうすると私が見ている範囲では、直後はほぼ完全に止まっている場合の人と、若干だけどにじんでいるかなと言うレベル位です。そして多くの患者さんはその多少にじんでいたとしても当日翌日ぐらいまでが違和感を感じる範囲です。それ以降はほぼ全く気にならないと言う方がほとんどです。

ですが先日、手術2日ほど経ってから血が止まらないような気がする、口から血の塊が出てきたと言う問い合わせの電話があり、患者さんに来てもらいました。そしてお口の中を見てみると、実際に血の塊が約1センチほどの円形上にあり、ここをうがいしたりすれば血がにじんできてとても気になるような状態でした。

これは実は、インプラント手術部位の周りを縫ってあるのですが、その糸をどうやら何らかの拍子に、歯磨きなどで強く引っ掛けてしまってちぎってしまったか、あるいは食事などで硬いものがたまたまそばに当たってしまったか、寝ている間に無意識に気になって触って引っ掻いてしまったか、と言うような状況が考えられました。そしてその血の塊、血餅と言いますが、それを除去していくと、歯茎の際から若干出血がにじんできます。ですのでガーゼで新たに歯茎を抑え止血を行いました。

この患者さんの場合はガーゼで抑えるだけで30分ほどでほぼ異常のない状態になりました。念のためさらに30分綿を待合室で噛んでもらい、もう一度確認しましたが、特に問題はなかったです。そして1週間後の治療の約束の時に状況をもう一度確認しましたが、その後は全く問題なかったとの事でした。本人曰く歯ブラシを強く当ててしまったかもしれないとの事でした。インプラントは壊れていませんか?と患者様から質問がありましたが、歯茎を何らかの形で傷つけて出血させただけでインプラントを壊して脱落してしまうようなつよい刺激を与えていると言うような状況はなく、当初の予定通りの場所にインプラントはあり安静状態であり歯茎や骨にくっついていくのを待つと言う状況でした。

または中にはなかなか血が止まらない人が稀ですがいます。このような場合には止血の薬を滲ませたガーゼを噛んでもらいます。親知らずを抜いた後に血がなかなか止まらないと言う方もたまにいます。そのような方にでも同じような止血効果のある薬をガーゼに含ませて噛んでもらうことがあります。そうすると一般的に10分から20分も噛んでいればほぼ止まる人が多いです。安全のため30分から1時間位噛んでもらうこともあります。そうするとほぼ正常な状態になっています。人によっては心配ですのでさらにご自身でおうちでも綿を噛んでもらったりすることもあります。

なお、患者さんによっては内科等で血液の流れを良くする血液サラサラのお薬、例えばワーファリン等を飲んでいる方もいます。あるいは心臓等に既往があり血管がつまらないようにするために抗凝固剤を飲んでいる方もいます。このような場合、外科的な処置を行うと一般の方よりも血が止まりにくいと言う話もあります。

以前にはこのような方はその抗凝固剤等の薬を飲むことを1週間ほど中止した上で手術を行うと言うのが一般的でした。しかし現在ではほとんどの場合、この抗凝固剤を休薬する事はありません。それを飲んだまま外科処置が行われ、その際に十分な縫合糸で縫う処置がしっかりしているか、またワタをしっかり噛むなどで対応して充分であると言うことが言われています。実際当院でもそのように対応していますし、内科の先生などもそれを推奨していることが多いです。

ですが万が一出血の量が多い場合はその時に対応が可能ですので相談してください。

インプラント治療直後に顔に黄疸が出る人

2023年8月3日

こんにちは、先日インプラントの治療の直後に手術部位の側の顔の表面に若干黄色っぽい色が出る人がいました。この患者さん曰く、自分は以前から大きな治療を受けて歯を抜いたりインプラントをしたりするとこのような色が一時的に出るようですとおっしゃっていました。

このように治療直後に、あるいは大体次の日位から1週間ほどの間ですが顔や口の周り手術の近くあたりで黄色っぽい色だったり茶色っぽい色だったり様々な色のまだら模様が出る場合があります、そして特に痛みがあるわけでは無いです、腫れてもいません。自然と消えていきます。このようなことが起きることがあります。

これは治療の際に内出血をしていて、その血が周りに巡っていることが考えられます。そしてこのようなことが起きるのはその人の個体差によって傾向があるように見受けます。すなわち以前もなったと言う人は次も大きな治療をするとそのようなことが起きる可能性があると言うことです。

このようなことがあると患者さんによっては、インプラントをすると怖いから、親知らずを抜くと怖いから、と言って次回からはもうちょっとやめておきます。と言う方もいます。実際自分の顔にちょっと黄色っぽい色が肌の表面に出ていればびっくりしますよね。ただこれは一時的な内出血ですのでその血が引いてしまえばどって事は無いのです。ですからそれを十分に理解する必要があります。またこれは多くの場合に出ると言うよりはかなり少ないです。

では、インプラントにこれが影響与えているのか?といいますとそれは特段問題はありません。インプラントの場所で何か異常が起きたために起きていることではありませんので、インプラントの治療は通常通りに終わっており安静にしていればインプラントは着実に骨、歯茎にくっついていきます。ただご本人としてはこの色が消えていくのを1週間ほどは待っていただくと言うことです。

その際特につよい痛みが出るとか言う事は無いので通常の医院から処方する抗生剤を飲んでもらうこと、場合によっては痛み止めを飲むこととなりいつもの通常の対応をしています。また患者様に伝えていることとして、これはどの人にも全員に伝えていることなのですが、インプラントをやった箇所のそばを手で触ることのないように、大丈夫かなぁと思っていつまでも一生懸命触っていると言うような事は良くないことです。また氷で冷やしたりしたら早く治るんじゃないか?と言うような行為もしないでください。触らずに何もしないで放っておくのが1番早く安静状態になります。と言うことを伝えています。

一般的に薬局などで冷えピタなど湿布のようなものが売られています。これをいろんなとこに貼って利用するわけですが、インプラント治療に関して言えば、この湿布を治療直後に貼ると言うような事はする必要はありません。もっと言うとやめてくださいと言うことです。

多少話は変わるかもしれませんが、患者さんによってはとにかく丁寧にきれいに万全を期そうとしてやりすぎてしまうことがあるのです。その例として以前コロナが流行っていた時期、マスコミにてイソジンによるうがいをしっかりすると良いと言うようなことがなんとなく報道されていました。どのような使い方をするとかどのような場合にやることが良くて、逆にどのような場合にはやるとまずいと言う事まで正確に伝えているわけでは無いのです。ですがなんとなくテレビから流れるニュースで報道されているために、視聴者の皆さんは、それを見ると、あー、イソジンがいいんだとなり、濃い濃度もしかしたら原液の濃度で一生懸命うがいをしてしまい、むしろ体を痛めてしまうと言うことが起きていたように思います。

私がこのようにホームページやコラムで情報発信をし皆さんと一緒に考え共有していくのには大きな役割があります。どうしても映像等の情報と言うのはなんとなく見ていてその1部を切り取って理解してしまっていると言う危険性があるのです。文章のホームページでもやはり1部の行だけを切り取って理解してしまうと、大きな誤解になりかねません。ですから1つの意見としては理解して、自分の場合はどうなのかと言う事は落ち着いて考えてみる必要があります。

世の中で流行っているものが1番良いものであるかどうか、世の中で1番目立っているものが最も優れたものであるかどうか?これは何とも言えないと思います。また全く流行っていない、目立ってもいない、けどとても価値の高いもの、内容の濃いもの、素晴らしいものもあったりすると思います。

Teeth isolated on green background. 3d illustration

良い入れ歯との出会い、インプラントの前に  

2023年7月2日

先日の患者様が、『やっぱり私はインプラントはどうしても怖いのです。先生の言うようにインプラントでやったらいいなぁと言うのはよくわかるんですけど、入れ歯でがんばってみたいです。』とおっしゃいました。この患者様はもともと前歯の辺りにブリッジを入れていました。そして奥歯にもブリッジが入っていました。しかしどうしても食いしばりなどが多く前歯のブリッジがダメになってしまいました。とても強い力で噛むためブリッジが耐え切れなかったのです。そしてそのブリッジを諦め、どうしようかと言うことになり、1度はインプラントでやろうと決意したのです。

しかし歯茎が治る間、仮の入れ歯を入れていたのですが、インプラントがどうしても怖いからとずっと入れ歯で過ごしていました。1年ほどそうこうしているうちに今度は奥歯のブリッジが弱ってきてそちらが壊れてきました。そしてそのブリッジの部分は根っこだけは何とか残ったので、そこで2本ほど歯の被せ物だけは作ることができたのでした。そして患者様と色々と治療の案をたくさん選択を話した後、入れ歯で行ってみようと言うことになったのです。

このように、インプラントはとても優れた治療法なのですが、問題点もあります。それは1つは患者様にとってはインプラントの手術をすることがどうしても怖いと言うことです。そしてもう一つはインプラント治療の方が他の治療法に比べおそらく治療費がよりかかると言うことです。このような観点から、入れ歯を考慮するということが時として起きてきます。またいきなりインプラントするのは怖いから、まずはいちど入れ歯で様子を見てみたいなどと言う人もいるのです。

まずは一度入れ歯を入れてみて、それがうまく使えそうか様子を見るわけです。ただ言える事は、実は、今までに何度もこのような方に出会ってきているのです。それは例えば、いきなりインプラントにするのは怖い、だからいちど入れ歯を作って欲しいですと、患者様から頼まれます。そして入れ歯をやるわけです。

しかししばらくしていろんな知り合いからインプラントをしている友達もいい感じでうまくいっていると聞いて、私にもやっぱりインプラントどうですかね?と患者様が言い始めます。そしてインプラントをやることになるのです。するとインプラントを入れた後、先生やっぱり最初からインプラントにしてもよかったかもしれないですね、確かにこれはすごくよく噛めて手入れも楽です。入れ歯に比べしっかりと噛めるので本当に安心です。みんなで食事をしに行ったときにせっかくのお肉が食べられなくて悔しい思いをしなくていいので本当に助かりました。と言われました。

だからといって最初からインプラントをしましょうと言う話では無いのです。やはり人間ですので色々と迷うものです。ですから入れ歯には入れ歯なりの良さもあるので、その点についてもっと詳しく皆さんに伝えていきたいのです。そして入れ歯に関してはかなり奥が深い話となります。

私は今までたくさんの入れ歯で苦労している患者さんと出会ってきました。そしてその人たちのお口の中を見るに、その人の人生の歴史を感じます。

まず皆さんによく知っておいてほしいこと、それは、これはかなり重要なことですよ、入れ歯と言うものはかなり個人差があるのです。

私は大学病院時代に、ある2人の入れ歯の患者様を治療しました。1人は女性で1人は男性でした。

1人の女性は、実は私が治療する3年ほど前に教授が入れ歯を作って入れていたのです。その事は患者本人もそう言ってましたし教授からもそのように聞いていました。このたび入院していて、だいぶ体も痩せて合わなくなってきたようなので新しく作り直したいと言う希望でした。で、この患者様を私が見ることになったのです。とても緊張してその患者様を対応しました。そして自分なりに精一杯作ったのですが、自分の出来栄えとしてはやや不十分なところもあったのではないかと散々に反省していました。しかし患者様の感想はとても調子が良い、噛める、よかった、ありがとう、うれしい、と。と言う大変パーフェクトな返事でした。

もう1人の男性の患者様は、この人も同様に精一杯自分で入れ歯を治療して作ったのですが、私なりにこの患者様の完成度や仕上がり具合はかなり自己満足のいくものであり実際お口の中を見てみても使ってもらってもこれならすごく良い結果なんじゃないかなと自分なりには思いました。しかし、この患者様は入れ歯を入れてから2ヶ月ほどはあそこが気になる、ここが気になるとずっと言い続けたのです。大変苦労しました。自分なりにはこの状態ならかなり良い方だと思っていたからです。

そんな時教授から声をかけられ、あの患者さんはどうだったか?と言われこの2人の見ている患者様の大きな違いについて話をしました。すると教授はこのようなことを私に教えてくれました。その女性の患者様が満足して調子がいいって言うんだったら、それが1番だよ、ドンダケよくできていたかうんぬんも確かに大事かもしれないけどその患者様が満足してるんだからそれでいいんだよ、自分の出来がイマイチだとかそういう事は気にしなくていいから。一方で男性のその方が色々と気にされていると言う事はやっぱり、入れ歯は難しいと言うことだよね、難しいと言うのは技術だけではなく相手が人間だから人によって感じ方全然違うんだよね。

このような指摘を受け、入れ歯と言うのは単に技術だけではなく様々な要素が複雑に絡み合う非常に難しいものであると言うことを痛感したのでした。

Elderly woman coughing

インプラントと誤嚥性肺炎について

2023年6月22日

先日訪問診療を行った際に、施設の方からインプラントと誤嚥性肺炎の関係に関して質問がありました。その患者様はインプラントを入れていて肝心なところにはかぶせ物の歯がしっかりと入っています、そのインプラントを土台としてさらにその足りないところに部分入れ歯が入っているような状態です。

施設の方によると、しっかりと前歯が入っているので、他の利用者の方に比べるとしっかり食事ができているように思いますが、やはり口腔ケアをしっかりしないと誤嚥性肺炎になってしまうのでしょうか?インプラントでも?

今回は誤嚥性肺炎に関して少しばかりお話をしたいと思います。

誤嚥性肺炎とは

まずそもそも誤嚥性肺炎とは何でしょうか?この言葉はここ数年よく皆さんも聞くのではないでしょうか。日本人の死亡要因のトップ3にはよく誤嚥性肺炎から来る肺炎肺炎が死亡リスクとして高いと言うことがわかっています。単に肺炎になっているわけではなく、様々な病状の終末期において、あるいは突発的に、誤嚥による肺炎になることがとても多いのです。ですので誤嚥性肺炎にはぜひとも気をつけたいところです。

一般的に食べ物を飲み込むことを嚥下といいます、それに対し嚥下をうまくできないような状況のことを誤嚥と言っています。健康な人の場合食べ物を口から摂取するわけですが、その口から食べたものは食道へいき、胃へと体の中に取り込まれていきます。が、飲み込みがうまくいかない場合すなわち誤嚥の場合はどうなるかといいますと飲み込むために使う喉や首の周り、顎様々な筋肉がうまく調和して使われずに食道の方へいかず、気道の方へ入ってしまうわけです。気道のほうに入ると言う事はそれは食べ物や飲み物が入る方では無いのです。そこは空気が通る道ですので、すなわち気道の先には肺がありまして、肺の中へと余計なものが入ってしまうと言う状況です。そしてこの肺に入ったときに一緒に食べものと一緒に余計な菌が入っていき、菌が繁殖してしまい全身に回ったりすると言うような状況が起きてしまうと言うことです。これが誤嚥性肺炎です。

誤嚥性肺炎を防止する方法

誤嚥性肺炎の防止のためにはお口の中をきれいにしておくと言うことが、まず基本的にあります。

先程の質問にあった施設の利用者の方には毎週1回、歯科衛生士が訪問をしてお口の口腔ケアを行っています。すなわちお口の中の菌、余計なものが体の中に入っていかないように常に気をつけているわけです。

もちろん毎日歯磨きをしているのですが、高齢者になるとなかなか自分のお口の中の口腔ケアも自分にはできない場合も考えられますので、歯科衛生士がお口の中のしっかりとした掃除をすると言うことが安全面では非常に重要な策となります。ここで先の利用者様はインプラントを以前に当院でしていますのでそのインプラントの歯はもちろん虫歯にはなりませんがお口の中では菌がどんな人でも必ず多少なりともいて、それがだんだん増えていきますのでお口の中のインプラントのほうも含めてしっかり掃除をさしていただきます。先程の部分入れ歯もお口の外でしっかりと掃除をすることになります。

食事をしていなくても誤嚥性肺炎になる可能性はある

さらにここから皆さんによく知っておいてほしいことをお伝えします。

これは今まで私は何度となくいろいろなところでお伝えしていることなのですが、意外に専門家の方でもよく誤解されていることなのでしつこく話しています。それは、胃ろうなどをして口から食事をしていないような方でも口腔ケアはとても重要であると言うことです。すなわち口からものを食べていないので誤嚥性肺炎になるわけはないと思ってしまっているのです。残念ながらそのような事は決してありません。

お口の中で常に唾液が出ていてその唾液を飲み込んでいるわけです。その唾液は残念ながら夜寝ているときに誤嚥することが結構あるのです。すなわち肺の方へ入っていく可能性がとても高いのです。これを100%防ぐと言う事は無理です。

ですから菌の繁殖する場であるお口の中は必ず掃除をすることが必要なのです。つまり口腔ケアの事ですね。

たまに付き添いの家族の方から、えー、もうおじいちゃんお口から食べてないから歯磨きしなくていいんじゃないの?などと言われますが、そのようなことを真に受けて歯磨きを全くしないとなるとあっという間に誤嚥性肺炎になり命の危険が生じます。

お口をいつもきれいに保つことが命を大切にするということです。

Tooth Implantation Model

インプラントの表面性状について

2023年6月15日

先日インプラントメーカーの方と打ち合わせを行いました。新しいインプラントの表面性状の製品が新たにできたと言うお話を聞きました。

インプラントとはそもそも何を指しているかと言うと、歯の根がなく歯の根の代わりになるものを骨や歯茎の中に埋め込むわけです。その土台部分のことを指して言っています。これは大きさにして直径4ミリ程度から5ミリ程度、長さ10ミリ程度のものです、かなりアバウトな表現ですがこれぐらいのシリンダー状の筒のようなものがインプラントであり、これが根の代わりとなるものです。このインプラントなのですが表面性状に関しては常にその状態が進化を遂げて変化しています。

例えば車で言えば、エンジンが常により良いものへと開発され、少しずつ少しずつ変化していくと言うようなことでしょうか。インプラントの表面性状と言うとおそらく皆さんは出来る限りつるっとしたものがより良いのではないかと想像しているかもしれません。

もう50年以上前位、初めてインプラントが一般的に患者様に使われるようになったとき主に海外ですが、そのインプラントの表面性状は確かにつるっとした滑沢なものでした。しかしその滑沢の表面性状がどんどん変化していき、なんと今ではその表面性状は凸凹しているのです。え?と思うかもしれません。

そうですよね、凸凹のものを口の中に入れて本当にくっつくわけがないでしょう、と多くの方が思うのではないでしょうか?しかし科学と言うものは不思議なものでインプラントは研究の長い歴史の中でその表面性状をわざと細かくてボコボコがあるような形に変化を遂げてきているのです。研究の結果その方が骨によくくっつくと言うことがわかっているのです。

この表面性状にさらにアパタイトをコーティングすると言う技術が色々と研究されています。アパタイトと言うのは歯や骨の成分に似た結晶構造のカルシウムのようなものです。これをインプラントの表面にコーティングもしくはインプラントそのもの自身で作れば、よく骨にくっつくのではないかと言うことがやはり昔から言われていました。そしてそのような医療材料が存在していたわけです。ですが利点欠点が様々あり、現在ではあまり主流ではありません。

欠点としてはそのアパタイトがある時破れて剥がれてしまうと言うモロさが分かっているのです。しかしさらに研究を積み重ねられその脆さを防ぐためにむしろそのアパタイトの厚みを限りなく30ミクロンなどと言うとても薄い薄層にすると言う技術が進んでいます。この薄い状態であると逆にはがれるのではなく骨の細胞と置き換わると言うことがわかっているのです。そのために欠点を克服したものが研究されて材料として世に出ている野です。

このような話は一見して目で見ても全くわからないようなとても細かいミクロンの話です。しかしそのように常に医療は小さなマイナーチェンジを繰り返し進化していきます。

最後にまとめとして皆さんにお伝え大したいこととしては、インプラントが材料として様々な表面性状が進化していくことでより良いものになると言う事はなんとなくわかると思うのです。それは具体的にはより骨にくっつきやすいものへと進化していると言うことです。

そしてもう一つ、インプラントが骨にくっつくのに昔は4ヶ月から6ヶ月、場合によっては12ヶ月のような長い期間がかかったのですが、今では最短では1、2ヶ月程度でくっつくような場合もあるのです。すなわちくっつく期間がとても短く進化していると言う、とてもありがたい話です。ただもちろん糖尿病など様々な全身疾患などで都合よく行くわけでもない場合も多々あります。ですので自らの健康管理にぜひとも気をつけてほしいと願っています。

以前4ヶ月から6ヶ月ぐらいは必要であると言われていたことが、1、2ヶ月程度でうまくいく場合もあると言う事はとても画期的なことです。骨との相性はとても良くなったと言うことです。ですが次の問題として骨がない部分を造骨したりすることが時々ありますのでそれはまだ短縮していませんのでどうしても最低でも4ヶ月ほどは時間がかかるかと思います。

そのような意味で総合的な安定感が得られるのには骨が痩せている人の場合は4ヶ月から6ヶ月と言うことにはなります。ですが健康状態が割合安定している人であれば1、2ヶ月でかぶせ物を作り始めると言うとてもスピーディーな流れとなっているわけです。とても喜ばしいです。

Tooth and dental implant isolated on green background. 3d illustration

インプラント治療と除菌について

2023年6月11日

先日、患者様のB様から質問がありました。インプラント治療は手術室で行うのですか?何かテレビのオペのイメージでちょっと緊張しますね。

そうですね、インプラントを行う上で1つ大切な事はその施術する場所が清潔で除菌されたきれいな場所である部屋であるかと言うことです。一般的に病院は床などをしっかり掃除して余計なほこりが溜まったりしない、菌が繁殖しないように様々な工夫がなされていることがあります。

もちろんインプラントをする施術部屋は当然綺麗でなくてはなりません。この辺をもう少し様々な工夫に関して皆さんと共有したいと思います。

まずインプラントの手術室に関しては当院の場合24時間オゾンによる除菌を行っています。これは国際空港等でも行われている方法で、海外から知らない間に何か菌が入ってくるのではないかと言うことを防御するために、空港は天井あたりから微量濃度のオゾンの空気が放出されていると言う仕組みです。

このオゾン除菌の大変優れた点は、もし壁や床様々な角を一生懸命こすって雑巾できれいにしようとしてもどうしても触れない場所、例えばパソコンが置いてあってパソコンの中を全部除菌するなんて無理ですよね。ですがオゾンの空気で除菌していくので全てにわたってそのオゾンの気体が中に回っていくわけです。全てが除菌できると言う大変ありがたい方法です。また空気清浄機、専門のものを24時間回しています。切る事はないです。

手術に使う道具等は当然滅菌済であるのが当たり前なのですが、実はそのようなことよりも意外に重要なのが床がきれいであるとか空気が淀んでいないかと言うことです。これは例えばの例で話すとインフルエンザが流行っているとしてその場合インフルエンザの菌を持っている誰かが使ったスプーンを使ってしまうと危ないですよね。ですからそのスプーンは当然洗ってから使うと言うことになると思います。

ですがもっと基本的なこととしては、インフルエンザの菌を持っている可能性のある人と同じ部屋にずっといないと言うことを皆さん考えると思います。空気をつたって移っていくかもしれないと言うことです。もし、オゾン換気をしている空間でインフルエンザの人がいたとしても、他人にうつる確率は極めて低いです。もちろん目の前で咳こまれたらそれはダメなのですが、マスクをして普通に一緒にいるだけであれば会話程度であればかなり危険度が落ちます。安全な距離での会話までの範囲であれば。ですから小学校など様々な施設でも空気感染に対する対策を重要視しています。

また当院で重要視していることとしては、床の掃除です。

これに関しては朝昼晩掃除するのは当然なのですが、特に朝1番に今一度、医療機関を得意とした専門の清掃業者がクリーンアップを行っています。その専門業者の方と以前にお話をしたことがあるのですが、海外で病院の掃除の仕方について研修を受けているそうで、ただ闇雲に床をモップ掛けすれば良いと言うわけではなく、まずは小さい砂埃などを確実に掃除機で吸いあげること、次にほこりがないようにする、その上でモップがけを行う、などしっかりと順番があるそうです。また壁にも様々な浮遊物がくっつきやすいそうでそのような壁は除菌コーティングをしなければならないそうです。また壁材も病院に適した素材を使うと言うことでした。

当院の入り口には風除室と言う場所がありますが、これは外から入る方が一旦小さな空間に入りそこからもう一度建物の中に入っていく小部屋のような場所です。これによって外からの空気を一旦確実に遮断して中の十分な除菌状態をキープしようと言う仕組みです。

このように建物がどのように作られているのかと言うことも何カ所も扉があったりして、それなりに理由があるわけです。また衛生管理に関する学会でも何度かいろいろ専門の先生に聞いた質問したのですが、空気の流れをどのようにするべきなのか、これに関してはまだはっきりとした結論が出ていないと言うことでした。空気を循環させるためにある程度サーキュレーターなどを使って工夫した方が良い事は分かっているのだが、それをうまく計測すると言うことがまだまだできず研究としてはあまり進んでいないと言うことでした。また湿度もどの程度にするのかというのが低すぎても高すぎてもダメと言うことはいえるが、はっきりとした事はまだ言えないとのこと。

このようなことから皆さんにお伝えしたいこととしては、一般の家庭であるとか昔から行われている基本的なことがいかに大切かと言うことです。例えば空気の換気をしっかりしようと言う事は大昔から言われてたと思います。またはたきなどを使って埃をなくす、床をきれいにする、など基本を大切にそして、その上で最新の技術を応用してオゾンクリーナーなどを用いて除菌を考えて行っています。

toothbrush with toothpaste

インプラントの素材とフッ素入り歯磨き粉について

2023年6月8日

皆さんはいろんな歯磨き粉を使って歯磨きをしていると思います。歯磨き粉の中にはフッ素入りなんてものがよく売られていますよね、そしてそれを選んだりしているかと思います。様々な効能が書いてあり、それを見てどれがいいかなぁと思って選んでいると思います。例えばホワイトニング効果があるなんて書いてあると、ちょっと使ってみたいかなぁと思ったりしますよね。今回は歯科衛生士のスタッフからよく質問を受けることに関して話したいと思います。

インプラントと言うものは金属でできていてその金属は何かと言うと、チタンです。お口の中にチタンの金属が心棒としてインプラントでは入っているわけです。このチタン、心棒なのですがフッ素と反応して腐食すると言う話があります。と言う事はフッ素入りの歯磨き粉でインプラントの入った患者さんが一生懸命歯磨きをするとせっかく入れたインプラントを痛めてしまうのではないか?と言う話になっていくわけです。

当院では歯科衛生士がお口の中のメンテナンスの掃除をしていることがよくありますが、その際にいろいろな歯磨き粉を使っています。例えば子供の場合であれば当然フッ素入りの歯磨き粉を使って掃除をしてあげることがいいと思います。また大人であれば様々な汚れやヤニなどが多かったりするとそのような汚れをしっかり取るような成分が入っているタイプのものを使ったりすると良いと言うことになります。

大人の場合でもフッ素入りの歯磨き粉を使うことによって歯を多少丈夫にすると言う効果はあったりもするので活用していることも多々あります。で、問題なのがインプラントの入ってる人をフッ素入りの歯磨き粉で掃除するのはどうなのか?ですね。

これに関しては様々な意見や論文が出ていますが現実的な考え方としてはインプラントの周りに高濃度のフッ素入りの歯磨き粉などをずっと長い間停滞させていれば、少しですがチタンが腐食するのではないかと言うことが考えられます、ですが皆さんが歯磨きをする上でフッ素入りの歯磨き粉を使ってインプラントを痛めてしまうと言う事は通常ではかなり考えにくい話です。

限られた場所にずっとフッ素をつけ続けると言う事はかなり至難の業です。もし仮に歯科衛生士がずっとその場所を30分にフッ素入りの歯磨き粉で磨き続けたとしてもそれでも腐食はほぼ起こりません。ですのでフッ素入り歯磨きを使うとインプラントを痛めてしまうと言う事にあまりにもナーバスになる必要は無いと考えられます。

ただ歯科衛生士はプロフェッショナルとして掃除を担当しますのでインプラントが入ってることが明らかにわかっている場合は、フッ素入りの歯磨き粉を使ってはいません。フッ素が入っていないタイプのもので患者様のお口のケアを行っています。また患者様にどの歯磨き粉が良いかとよく質問されることがあるのですがインプラントが入っているということが事前にわかっていれば、入っていないタイプでその人に合ったものをお勧めしたりする場合も結構あります。

ですが皆さんどうでしょうか、おうちで一人一人が自分の歯磨き粉を使っていますか?もしくは家族全員が同じ歯磨き粉を使っていますか?あるいは大人と子供に分かれているでしょうか。いろいろな場合があるかと思いますが複数人で歯磨き粉を共有している事は十分にあり得ますよね。ですので一般的には最近の歯磨き粉はフッ素入りのものが多いです。そのフッ素入り歯磨きを使っていただいて大丈夫です。また日本国内ではあまりに濃度の高いフッ素入りの歯磨き粉は売っていません。海外にはありますが。ですので家族で共有して普通の歯磨き粉を使っていけば良いかと考えています。

もっと言うなら、どの歯磨き粉を使うと言うよりは手入れをしっかりほんとにやっているのかと言うことです。私の好きな例えで表現しますが、どの英語の参考書で勉強すると1番良いかを一生懸命考えるより、どっちでもいいからその1つの英語の参考書を徹底的に覚えた。その人の方が良い結果が得られると言うことではないでしょうか。

Doctor dentist showing patient's teeth on X-ray

インプラント治療と縫合用の糸について

2023年6月4日

インプラント治療を行う上では様々な縫合をするために糸が使われています。先日、40代の女性の方から質問がありました。それは、糸で縫うのに吸収する後から取らなくて良い糸でやる事はできませんか?と言うお話でした。

結論から言いますと歯科のインプラント治療において吸収タイプの糸を使う事はほとんどありません、吸収タイプの糸を使う場合は歯茎の表面を縫っているのではなく、もうこの先開けないであろう場所、切って開けたりしない場所を縫う場合です。ですのでそのような状況はインプラント治療ではあまり起こる事は少ないです。

インプラントの治療で糸を使う場合には主に2種類の糸が使われています。その2種類の糸とはナイロン製と絹糸製です。この両者はどちらもインプラントの手術が終わって1、2週間ほどしてからこの抜糸すると言う作業がきます。この抜糸の作業に関してはそんなに痛くは無いのですがやはり多少チクっとするので患者さんによってはちょっと気になったりするのかなと考えられます。ですが、吸収タイプの糸は通常の糸よりとても高価なものであり、そこに費用をかけると言う事はあまりなく、またそれよりも優れた点がある糸が先程のナイロン、絹糸ですのでそちらを普通は選択しておこないます。

それぞれの意図の特徴などをお伝えしていきたいと思います。まずナイロンですが、ナイロンはまぁ皆さん何となく聞いたことがあると思いますが、人工的に作られた化学物質でありその最大の特徴はつるっとしているために菌が繁殖しにくいと言うことです。お口の中を糸で縫っていてその糸が存在しているわけです。そこの歯茎は小さな穴が空いてるわけですから、その糸の周りで菌が繁殖したりすれば傷口が腫れたりなど感染したり様々なリスクがあるわけですが、このナイロン糸の場合は菌を繁殖させることがないので非常に口腔衛生状態がきれいに保たれ歯茎がきれいに安全に治りやすいと言うとても都合の良いものなのです。一方で若干の弱点があり、このナイロンは行って見ればとても柔らかいプラスチックのようなものですから。使う際にちょっとくにくにしていて扱いにくいのです、ドクターにしてみれば。

次に絹糸について。絹糸は昔からよく使われている糸でありこの糸の良い点はしっかりと力をぐっとしめていくことができる、その術者がどの程度力強くそれを引っ張って締め上げたいのかと言う力のコントロールがとてもしやすいです。ゆるくわざと結びたい時、逆に強く結びたい時、それぞれ力のかけ具合がコントロールがとてもしやすいです。ですので現在、口腔外科ではとてもよく使われている糸の1つです。そしてこれは皆さんが通常に普段裁縫などする人にはわかると思いますが、大体好きなような形に自由にコントロールしやすくて、あっちに行ったりこっちに行ったり遊んだりしないので作業をする際にとても自分の思い通りに動かしやすいと言うそのような手技的な便利さもあります。

ただ重要な弱点があります。これは非常に問題の弱点です。それは絹糸は細菌をどうしても繁殖させる可能性があると言うことです。絹糸は織ってあるわけですので、まさに糸であり織物ですから、そな織りの中にどうしても菌が入り込んで繁殖ししまう可能性があるのです。ですからどうしても菌が繁殖する危険があるような時にこれを使う事はちょっと厳しいです。

今世界的にはインプラントの治療の場合にはかなりの割合でナイロンが使われています。それはやはり感染を防ぐと言うことです。菌がお口の中で繁殖してしまうリスクを避けたいために多少使いにくくてもナイロンを使いより安全性を重視していると言う選択になっています。

ちなみにナイロンと絹糸のお互いの良いところをミックスさせた特殊な糸があります。これは人工的に作られた糸なのですが、表面は菌を繁殖させない一方で、結んだときに強く縛るか弱く縛るかコントロールしやすくなっていると言う、いいとこ取りのものが実はあります。この糸はとても高価であるために必ずしもそんなに汎用されているわけではありません。

結論的に言えることとしてはその先生が慣れている糸を使うと言うことになるかと思います。ナイロンに慣れている人はナイロンをうまく使いこなしますし、絹糸に慣れている人は絹糸をうまく使いこなして手術の計画を考えます。

最後に私個人は昔は絹糸を使っていました。それはやはり力のコントロールが非常にしやすく糸を抜くにも安全に確実に取りやすいと言う利便性があったからです。ですが現在ではナイロンを多用しています。絹糸を使う場合はどうしてもその手術部位がナイロンで保護するには難しい場合に限っています。それぞれの良さを考えて使うのですがそうなるとほとんどの場合はナイロンを使うという使い方になっています。