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小児矯正と装置の装着時間

2023年11月2日

小児矯正において、様々な装置がありますが、今回はマイオブレースという装置に関してどれくらい入れているべきなのかと言う話をしたいと思います。そもそも小児矯正の装置でも取り外し方であるにもかかわらず、24時間ほぼ入れていた方が良いという装置は結構あります。

例えば、上顎や下顎を単独で横方向にカーブを広げるような装置の場合は、24時間入れて1週間にいっぺんなどネジをまわして拡大していくという使い方が一般的です。この装置の使い方の問題点としては、小学校に行っても常につけていなければならない、そしてその管理を子供が十分に果たして行えるか、と言うことです。しかし取り外し型ですので、逆に口の外に出した状態で、親がそれを掃除したりちゃんと入っているかを確認したりなどもできると言う意味では利点ですし、また何かあった際に痛いからとりあえず外そうということもできるわけです。

さて今回私が特に医院で使っているお勧めの装置はマイオブレースです。この装置の装着時間は子供が学校から帰ってきてから寝るまでの間に1時間入れるのが基本です。そして夜間寝ているときに入れているという使い方なのです。すなわち学校へは入れないで行くのです。そう言うと、保護者の方の中には昼間ほとんど入れてないのに大丈夫なんですか?と聞いてくる方もいます、そうなんです。学校には入れて行かないのです。それはそれなりに意味があってそうなっています。

このマイオブレースは歯や口の周りの骨を直接的に動かすために作用しているわけではなく、口の周りの筋肉や筋肉の動き、特に舌の動きなど、そういった環境を形作っている要素を正しい位置に覚え込ませるための装置です、のでずっと入れていたのでは逆に意味がないのです。まず学校から帰ってからの1時間、これは本人が意識してきちっと入れて口も閉じます。鼻で息もします。そうすると自分でこうしなければいけないんだということを感じながら使うわけです。まさに自分で感じながら筋肉トレーニングしています。

次に夜寝るときに入れるのは、最初寝る前はちゃんと口を閉じなきゃいけないとか、舌の位置は上顎につけておくべきであるとかを意識していますが、だんだん眠っている間は無意識の状態になるわけで、その無意識の時に、正しい筋肉の使い方ができるかどうかの練習をしているわけです。

無意識の状態でも、正しい筋肉の動きが習慣化するかどうかのトレーニングを約8時間から10時間位の睡眠中に行うわけです。そして学校に行くときには外していますから、装置を入れない状態でも口を閉じる、鼻で息をする、舌は上顎につけるという正しい筋肉の動きができるのか、このような3つのパターンの繰り返すことによって、最終的には無意識の中で正しい筋肉の動きができるようにということを覚えて、体に覚え込ませるわけです。

ですから入れる、入れないというこの繰り返しには深い意味があります。意識しながら入れる、意識しないまま入れる、この起きている時と寝ている時、この2種類の使い分けも意味があります。単にぐいぐいと押して何とか歯を並べようというそういうような考え方では無いのです。

ですので、マイオブレースを患者さんに入れてもらうわけですが、毎日起きている時間、学校から帰ってきてから寝るまでの間1時間この装置をしっかり使うことが大事です。装置をしっかり使うことが大事でかつ、口を閉じる、鼻で息をする、など。

また、小学校1、2年生位であれば1時間で良いでしょう。しかし、状況に応じては4年生5年生6年生でもこの装置を使う場合があります。このような場合は2時間入れておく必要がある場合もあります。特にスタート時期が遅かった場合、成長の余地が減っていますので、起きている時間に多めに使っていただくということになる場合があるのです。これはどのような時期にどのような程度かによってだいぶこちらのアドバイスも変わってきます。患者さん一人ひとりによって違いますが、1つの目安としてご理解ください。

また何ヶ月もやっていまいち成果が出ない人もいます。これは研究の上ではっきりわかっていることなのですが、しっかりとやっていない、ただしく使っていない、ということです。よって結果が出ないという事はないです。何らかの変化が起きます。全く変化がないとなると、こちらのいった正しいやり方をしていない、もっと言えば、子供がサボって真面目に取り組んでいないと言うことです。

このような場合は別の装置を新たに用意して、別途費用がかかり、さらに治療を進めていくような場合もあります。

ですが、別の装置ではなく、まずは第一せんたくのマイオブレースをおすすめします。健康な体を作るためにもなるからです。

マウスピースの素材は何か?歯科治療と素材

2023年10月26日

治療の成果結果を出すためには、その歯科治療が、どのような素材で治療をしているのかと言うことがとても重要です。

素材と言うのはもう少し違う言葉で言えば材料です。

例えば矯正治療をする上でマウスピース矯正と言うものがありますが、マウスピース矯正とは透明なプラスチックのものを歯にはめ込んでは動かしていくタイプの装置です。このマウスピースは、今、現在の時点では、海外で作られているものが最も素材としては優れていると思われます。一方で、日本国内なんかでこれに似たようなものが作られています。素材は違います。良い素材を使えば0.1ミリ単位で歯を動かす計画を立てられますが、現状日本で作られているものでは0.25ミリ位が限界で、この技術力は3年はまだ差は埋まらないといわれています。

もし皆さんがそねマウスピースを見た際、ほぼ同じものに見えると思います。
もっと言えば、我々歯科医師がそれを見てもはっきりと判別がつかないほどわかりにくいです。
その素材が何で作られているのかを歯科技工所の方より情報を入手しなければわからないでしょう

今これはとても重要なことを言っています。歯を正確に動かす、それは歯科医師の診断も大切です、歯科医師の手がどのようにうまく上手に動くかなどの技術力も大切です、そしてもちろんその時に使っている素材が何か?その素材は、どのようにして工場で加工されているのか?このようなことが総合的に関係しています。

ですが、今回は特にその素材についてだけ深掘りしていきたいのです。それは先にも述べましたように素材を見ただけで、皆さんはもちろん、その違いは全くわからないですし、私たち歯科医師、専門家が見てもよくわかりにくいのですですから、信用のおける取引先である歯科技工所等と確実に確認ができるかと言うことになるわけです。私は矯正治療において、本格的に歯を動かす場合は、費用が高くても海外のマウスピースを使います。それはやはりそれが現状最も優れた材料であり、それが2番手、3番手の材料ではまだ不十分であると感じるからです。もっと言えば明らかに差があると言うことです。多分、けどこれ患者さんにはわからないです。

この原材料問題や加工問題ですが、特許の関係もあり、特許が切れると、日本や韓国、中国など様々な国でもそれを利用したものが出てくると思われます。そうすると同程度の成果のあるものが多少安く手に入ることも考えられます。

このような事はよく私はその業者に何度となく質問しています。どうしてこちらの方が高いのか、その技術的な差は一体何なのか、材料にはどのような差があるのか、どのような工程で加工をしているのか、そういうことをとことん聞くと、自信のあるメーカーはやはり何がどのように違うかと言うことを正確に答えてきます。そして2番手以降の業者もよくよく聞いてみると、どこに多少誤差があると言うことを正直に言ってきます。そしてそれが実際に臨床的に問題になるのか、治療の結果に差になるのかを、歯科医師は十分に吟味するわけです、そして、そこに患者様の臨床的成果に置いて差があると判断した場合は、どちらを選択すべきかを冷静に決めていくわけです。すなわち、費用で決めているわけではないと言うことです。もちろん、安価でも成果が出るのであれば、それを選択するのはアリだと思います。

別の例でいいますと、ジェネリックの薬がありますが特許が切れて後から作られる薬品が安いのであれば、同じものであれば、それでも同程度の効果が得られると言うことであれば良いかと思います。しかし、一部の医師によれば、ジェネリックではなく、本家本元を使わないと差があるということを言われる方も何人か出会いました。ほんの少しの工程作業の違いそれでも臨床的には差があるから信用しないと言うことでした。それもその先生、その先生のこだわりだと思います。

歯並び、開口について

2023年10月22日

歯並びで、開口と言う状態はどのような状態でしょうか?

それは簡単に言うと本人は口を閉じているつもりなんだけれども、上下の歯があまり当たらず、前歯のところに隙間があると言うような状態です。前歯のところに空間があります。うどんやそばを前歯でかみ切ろうとしてもちょっと難しいです。

このような状態の患者様を治療をする際に、歯並びをきれいに揃えるのは、実は難しいと言うふうに矯正学的には言われていることがあります。

この状態を治すには何が大事か?それは、単に歯の位置の問題だけではなく、舌の位置、動きや、口の周りの筋肉が関係しています。

もし、あなたが毎日ずっと舌を前歯の間に挟んでいたとします。そうするといくら矯正で針金や様々な装置を使って歯を動かそうとしても、常に舌がそこにあるためにうまく歯は動きませんよね。舌の位置がおかしい限り、歯並びはきれいにならないのです。あるいは舌をいつも癖で常に間に挟んだりする動きをしていればうまくいきません。

ではその動きとはどんな時か?それは実は飲み込む時です。嚥下といいます。人はご飯を食べたり、水を飲んだりするときに飲み込みをしています。嚥下運動をしていると言うことです。ですが、それ以外にも1日に2000回唾を飲み込んでいると言われています。この無意識のうちに何度も飲んでいる唾の飲み込み運動、この運動では舌の動きは欠かせません。舌が上顎について陰圧になって、ご飯を飲み込んだり、お水を飲み込んだり、唾を飲み込んだりしているのです。無意識のうちに1日2000回も舌が、前歯と前歯の間に挟まれていたらどうでしょうか?2000回も突き上げを食っているんです。そうしたら端の位置はおかしい位置になるし、隙間もできてしまいますよね。そして一生懸命直そうとしても、なかなか針金の力に逆らってベロが押してしまうために良い位置にいまいち揃わないわけです。正しい嚥下運動を行っている場合、舌は前歯と前歯の間には入っていません。ですが、間違った嚥下運動をしている人は、前歯と前歯の間や奥歯の間に舌が入り込んでいています。

ですので、矯正治療を行う上で、舌の運動や舌の位置のトレーニング指導をしっかりやっていくことが重要であり不可欠なのです。

特に子供の場合、マイオブレースのようなマウスピースをしっかりやることです。すなわちお口の周りの口腔周囲筋のトレーニングです。6歳くらいから2年しっかり指導を受ければ、針金などしないで終わっている子もたくさんいます。

ちなみにですが、その結果をだすためにはオトナはそれを相当やる必要があります。しっかりとです。相当やる必要があります。

患者さんやその保護者の方はよく歯医者に行けば歯が良くなるのではないか、矯正治療を受けているのだから、金具をつけているのだから、装置をつけているのだから良くなるのであろうと思っている人もいますが、例えば塾に入れば必ず成績が上がるのか、習い事をすれば必ず身に付くのか。どうでしょうかそうではなくてそこにいて、かつコーチ何かのアドバイス、先生のアドバイスをしっかり聞いた上で当然、普段からの努力があり、そして成果がでると言うことだと思います。

大人の場合は、マイオブレースの治療だけでは、必ずしもそんなに良くはならないです。やはりどうしても針金やマウスピース等の歯を直接動かす器具を装着してやっていく必要があり、なおかつ、舌や口の周りの筋肉の運動のトレーニングをしていくと言うことなのです。

このように開口の場合は、単に装置が治していると言うよりも、トレーニングをしっかり本当に理解して、その必要性を感じてもらい、行動したかどうかが最終的な結果に大きく影響与えているため、歯科医師の単なる技術だけで治っているわけではないと言うことなのです。ですから難しいのです。

Teeth brace in the white background, 3d rendering. Computer digital drawing.

ワイヤー矯正とマイオブレース併用

2023年10月19日

針金の矯正をする際に、+ αでマイオブレース・アクティビティーズを併用する方法があります。これは針金が付いているにもかかわらず、その針金がついた上から直接的にマウスピースが入るのです。

一般的に皆さんにはイメージがしにくいかと思います。そしてこの方法は、何もすべての患者さんに行う方法ではありません。どうしても問題がある場合にだけごく1部の患者さんに行われる方法だと思ってください。どのような人に行うのか?それは針金をつけているにもかかわらず、なかなか歯が動かず、成果が出ない人です。そしてその成果の出ない理由は大体わかっていて、舌が正しい位置にいない、顎の筋肉の使い方がおかしい、呼吸の方法が間違っている、腹式呼吸ができないなどです。

針金をつければ大抵の場合は、その針金の力によってある一定の位置までは動きます。しかし、より正しい位置に安定する、もしくは針金を外していてもより良い安定した位置でずっとキープできていると言うことが起きるかどうか?それはその人の口の周りの筋肉の使い方や呼吸の仕方、先ほど述べたような舌の位置などに実は大きく依存しています。これらの口の周りの筋肉や普段の呼吸の仕方がおかしい場合には、実はなかなか良い位置では安定せず、針金をつけていても結果が出ないのです。そのような特殊な場合としての対応策です。

小学校6年生以降で2期治療をしている場合に矯正で針金をつけていると言う事歯よくあります。これはインビザラインのような針金代替の治療を選択した場合も同様です。

この針金をつけている状態で、なかなか十分にはが並ばない成果が出ないと言う子供がいますが、実は大人でもそういう事はあります。むしろオトナの場合、特に厄介です、それは大抵の場合、お口の周りの口腔周囲、筋の動きが間違っているクセの期間が長い人が多いのです、特に舌の力、飲み込みが関係していることが多いです。舌が下の方を押している、舌が歯と歯の間に噛まれている、そのような状況で、舌は大きな筋肉であり、その筋肉が常に歯に対し、間違った方向に力を加えているためにどうしてもいまいち歯並びがきれいにならないのです。また、噛み合わせ、顎の位置も間違った位置になっていく原因です。

実際には多くの患者さんは針金をつけることによってある一定以上の、パーセンテージで言えば80%位それぐらいの、人がほぼほぼは正しい位置に歯が移動していきます。しかし何年たっても具体的には2年とかですが、歯がきちっと動かない、イマイチな場合を見受けます。そのような場合は、そこで針金をつけながらマイオブレースのマウスピースをつけながらの治療を行います。針金をつけてなおかつ、ボクシングのマウスピースのようなものを口の中に入れておうちでは過ごしていただき、夜寝るときにはそれを入れていると言うような状況になるわけです。なんだか装置だらけだと思いますが、それぐらいに2期治療、大人になってからの治療に関して、筋肉の力、動きが原因であり、様々なことが問題として起きてしまうと言うことなのです。

little girl at a Children's dentistry for healthy teeth and beautiful smile

矯正治療と歯並びの原因について

2023年8月20日

歯並びが悪いことを専門用語では不正咬合といいます。不正咬合に関して様々な研究がありますが、5歳から17歳を対象に調査した場合に88%が不正咬合であると言う結果があります。すなわち10人中9人は不正咬合、歯並びが悪いと言うことです。皆さんこれをどう思いますか?一方でアフリカなどで未開拓地の住民を調査したデータなどを見ると不正咬合の人はかなり少ないと言う結果が出ています。ここから読み取れる事は何かといいますと、文明生活が不正咬合を生み出しているのではないかと言うことです。

文化人類学的にもこのような調査は世界的に行われていますが、先進国にこそ不正咬合が多いと言うことがわかっています。前回にもお伝えしましたが、われわれは現在生活の中でとても柔らかい食事をしています。その結果、顎の筋肉や骨が十分に成長せず歯はうまく並ばないのです。
このような顎の筋肉や骨が十分に成長していないことを、専門的な言葉で、筋機能障害といいます。筋機能障害と言うとかなりなんだか難しい言葉に聞こえてきますよね。筋肉を機能として十分に使っていないと言うことです。すなわち昔はもっと硬いものを一生懸命必死に何回も何回も噛んで食べていたんだけども、最近では柔らかくてしかも飲んだりすれば十分に栄養がしっかり取れたりする、そんな便利な生活を送っているために必死のトレーニングを放棄してしまっているわけです。

そのために筋機能療法を行う必要があると言われています。筋機能療法とは、筋機能のエクセサイズを行い強化することです。ごく簡単に言ってしまえばしっかり噛むと言うことです。しかし歯科医療で歯並びを治すと言う意味においてはそのような簡単なことでは治りません、と言うのは筋肉と言うのは噛むための筋肉だけではなく他にもいろんな筋肉があるのです。それは例えば唇の中にも筋肉はあります。例えば舌も筋肉です。舌をどのように使っているかとても重要な関係があります。歯並びと舌って関係あるのか?と思われる方もいるかもしれませんが、とんでもありません。かなり関係があります。

さて当院ではこの筋機能療法である口の周りの筋肉や呼吸等を正常な状態にするためのエクセサイズを矯正する場合には必ずセットで指導しています。これには重要な根拠があります、それはある論文によると矯正治療を行った際に、矯正器具のみをつけていた治療では84%に何らかの後戻りが起こると言う報告があるのです。一方で矯正装置とこのエクセサイズを両方行った場合には、36%の後戻りがあると書かれています。

ここからわかることは装置をつけて歯を動かす事は確かに重要なのですが、それ以上に顔の周りの筋肉のエクセサイズをしっかりとマスターしていくということがかなり重要だと言うことです。むしろそれを全くやらないとなるととても心配な状況になっていますよと言うことです。
これはちょっと違う例で表現しますと、このようなことになるかと思います。野球のクラブチームに入って上手くなりたいからと言うことでとても性能の良いバットとグローブを手に入れていつも練習していること。ところが性能の良いバットとグローブを手に入れただけで、それを試合ごとに使うだけで果たして良い成績で活躍できるでしょうか?そうでは無いですよね。確かに良い性能のバットやグローブがあった方が良いのですが、当然それを用いてしっかりとした練習や筋トレなどや走り込みなどをしていない選手が良い成績が残せるわけがありません。

さてまとめに入りますが今回お伝えしたいこととしましては、歯並びが悪くなる原因は現代生活にあり、それは小児期にあり、現代の生活を送っているからと言うことです。そして具体的には顎の筋肉などが十分に発達していないと言うことです。そして親がいびきをかいて寝ていれば子供もそれを真似して間違った生活習慣をしてしまう可能性があると言うことです。そしてそのような悪い歯並びを改善していくためには、単に装置を入れれば良いと言うことではなく、正しい体の使い方、筋肉のトレーニングをエクセサイズをもう一度学び直す必要があります。それこそが最も矯正治療の重要なポイントであると言うことです。

よく患者様はどのような装置で治療するのか、その装置が痛いのか痛くないのかと言うことを一生懸命聞かれますが、それで良し悪しを判断するというのはとてもバランスが危ないです。

close up of woman wear brace and touch her face

矯正治療と遺伝について

2023年8月17日

歯並びなどは遺伝の要素が強いと思っていませんか?例えばお母さんが出っ歯だから娘も出っ歯になった。お父さんは下顎がとても出ているから、この子もしゃくれたような顎が出たような顔になった。このような話を時々患者さんから聞きます。そして多くの親が、特にお母さんが、私が子供の頃歯並びが悪かったのできっとこの子も悪くなるのではないかととても心配です。と言って来ます。

そうですね、以前は歯科医学的に歯並びや顎の形等は70%位遺伝の要素で決定すると言うふうに考えられていました。しかしその後、遺伝の要素はそんなにないのではないかと言う研究が進み、そのパーセンテージはなんと30%位ではないかと言う論文が出てきたのです。さらに現在では遺伝的要素が10%位ではないか、あるいはもっと低い、あまり関係がないと言う論文さえ出てきたのです。親子は当然ですがDNAを半分ほど共有していますので似たような顔になるのではないかと考えられる、のですが、これが実は結構思い込みであるということが近年ではわかってきています。確かに遺伝で親子が似ると言う要素もいっぱいあるのは事実であり間違っていません。

しかしここからがちょっと難しいところでして、出っ歯であるとか歯並びが凸凹している、顎が小さい、あるいは大きい点などに関しては、実は遺伝的な要素はほとんどなくて、生まれてからの生活習慣が大きく影響しているのです。

現代人はどうして歯並びが悪くなるのか?と言う事の研究がだいぶ進んできています。
その原因はかなりわかってきていて、生まれてからどんなものを食べているのか、すなわち我々現代人は現代生活の中でとても柔らかいものを食べています。その結果、顎の周りの筋肉は発達しない、しいては顎の骨自体もあまり成長しないと言うことになり、歯並びがガタガタになっていったりするわけです。

また多くの子供たちは鼻で呼吸せず、口で呼吸をしています。この口呼吸の習慣が、生活が、とても問題です。本来人間の体は鼻で呼吸するように設計されているにもかかわらず、口を開けて口で呼吸しているのです。そうすると舌の位置もおかしい位置となり、口の中で舌があさっての方向へ力をかけて、あごや歯をずらして行きます。そのために上顎が十分に大きくならず下顎だけが前に伸びてしまっているかのような状態の顔になったりしている子もいます。

この口呼吸をどうするか?なのですがこれに関しては、例えば十分に母乳を飲んでいないで育ったと言うことが因果関係があるとも言われています。

ともあれ現在生活の中で子供たちは様々な弊害を抱えて不十分な成長になってしまっていると言うことです。また親子で似ると言うことに関していいますと、それは親がいつも口を開けていれば子供も口を開けているような呼吸をするようになります。生活習慣が親子で似ると言うことです。ですので決して遺伝では無いのですが、後天的な生活習慣の中で、親子が一緒に過ごし、親が間違った呼吸法であるとか発音をしていれば、子供もそれに似通った体の使い方をしてしまいます。その結果歯が出っ歯になったとして、いかにも親子だから遺伝だと思ってしまうわけです。

ここで皆さんによく学んでほしい事は、歯並びは必ずしも遺伝ではないと言うことです。遺伝だから仕方がないと言う事は実は間違っていると言うことです。親が毎日いびきをかいて寝ていれば、いつしか子供もそれが普通だと思い口を開けていびきをかいて寝るようになったりする可能性が高いです。

そういう意味において子供の矯正治療をする際には、できれば親も一緒に生活習慣を見直してみるのが良いきっかけであると思っています。

Young beautiful woman holding dental aligner orthodontic to teeth correction with happy face near mouth

ドクターから見たマウスピース矯正とワイヤー矯正どちらが良いか?

2023年7月16日

前回、患者様よりワイヤー矯正かマウスピース矯正かどちらが自分に合っているのかと言う話をしました。今回はさらに患者様自身のパーソナルな都合ではなく医学的に見てドクターがどのようにそれを判断していくのかと言う点をさらにお話ししていきたいと思います。

実はその患者様のお口の中の状況において、明らかにこれはワイヤーでやるしかない、もしくは明らかにこれはマウスピース、インビザラインなどでやった方が良いと言う2つに分かれる場合があります。またどちらでもほぼ同じの同等の結果が得られるであろう、という場合もあります。もっと特殊な例としてはワイヤー矯正とマウスピース矯正のコンビネーションをやったほうがいいと言うような場合もあります。ただほとんど多くの場合はワイヤーでもマウスピースでもどちらでもいけると言う診断になる患者さんが圧倒的に多いです。

ですが専門家として歯並び、噛み合わせを見ていく上で、この場合はマウスピースの方が有利であろう、この場合はワイヤーの方が有利であろうと言うことがありますのでそれをお伝えしなければならないシーンもあるのです。ですからもしあなたがマウスピースを希望していたとしても、私が歯科矯正的にどちらのほうが有利であると言うことがある場合には、例えばやはりワイヤーにしたほうがいいと思いますよと、お伝えしてお勧めします。逆にそんなに多くは無いのですがこれはマウスピースでやったほうが有利ですよと言う場合もあります。それはどんな場合かと言うと顎の関節に負荷がかかりすぎていて、顎関節症になっていたりもしくは顎関節症になりそうであったりと言うような場合が考えられます。このような場合は顎の関節に負荷を与える事を考えマウスピースの厚みが約1ミリから2ミリほどあり顎関節のクッションとなるマウスピース矯正を進めていることがあります。

またかなり専門的な話になりますが歯を抜いての矯正の場合には針金の方がワイヤーの方が良い場合が多いです。ですがこのようにここには書いてますがそれでも歯を抜いているにもかかわらずマウスピース矯正でも十分に成果が出る場合もこれまたなんとあるのです。ですのでせっかくやるなら目立たないマウスピースが良いと思っている人でもワイヤーではなくてマウスピースでも充分同等の結果が得られると言う場合もありますのでこれ本当に非常に微妙な話なのです。ですからいろいろなところであなたはどういう方法が良いかと言う情報を得ているのではないかと思いますが、一人一人ケースバイケースだと思ってください。またその矯正の先生がどちらが得意なのかと言うことにも影響がある場合があります。

すなわち例えば、インビザラインなどのマウスピース矯正が得意な人の場合はまず目もっててマウスピース矯正を全面的に進めてくる可能性が高いですし、マウスピース矯正しかやっていないと言う矯正歯科もある位ですから、そうなるとどちらが良いと言うよりはマウスピース矯正で何とかならないかと言うところからどのように歯を動かすべきかと言う治療計画になっていくわけです。一方で矯正の専門医でワイヤーを中心に行っている人たちはあまりインビザラインなどのマウスピース矯正をやろうとはしません。それは1つには大学病院などの矯正歯科ではマウスピース矯正は一般的に行われていなく針金を使ったワイヤー矯正が中心ですのでそのテクニックを駆使したやり方をすることになると言うことなのです。このようなことから非常に患者様にとっては紛らわしい情報が起きているということなのです。

ここから私の個人的な意見を言います。マウスピース矯正、ワイヤー矯正それぞれに得意な動かし方があると言うことがわかっています。ですのでどちらがより有利であるかと言う事は50/50で検討すべきです。その中で明らかにワイヤーの方が有利であるとか、明らかにマウスピースの方が有利であると言うことであればそちらの道に進んだほうがいいです。また4対6くらいの差であれば自分の好みの方を選ぶのも手だと思います。

このようなことからよく相談して話し合って、どの方法で行くのかを決めると言うことをしっかりやるべきです。自分がどのように思っているのか、自分がどのように考えているのかと言うことも重要なのですが、どちらが有利な動かし方となるのかということも検討する必要があるわけです。

そして私は患者さんの希望をよく聞いた上でその希望に沿ってやった方が良い場合はそれを後押しますし、希望に沿わない方法になる場合にはどのような違いがあるのかと言うことを今一度説明しますし、さらに明らかに希望と違う方法に行くしかないと言う状況であれば、もうこちらでやるしかないですよと言うことをきっぱりと伝えています。

そしてさらにこのように散々最初に治療計画を立てても実際には人間の体ですから思ったように全てが動くわけでもないです、そして途中で治療計画を変えてワイヤーからマウスピースに変わったりマウスピースからワイヤーに変わったりと言う患者さんも実際に何人も私も経験しています。

そういう意味において自分の意見を言う事、そしてドクターの意見を受け入れると言うこと、そして予定通りに必ずしも進行するわけでもなくそこから治療計画が大きく変わることもあり得ること、それを受け入れていくと言うことが自分の体にとって最善となると言うことなので、理解してください。

white smile with curvature tooth of young woman on background in studio

マウスピース矯正かワイヤー矯正か?

2023年7月13日

こんにちは先日患者様で、マウスピース矯正にしたいのだが自分の場合はワイヤーの方が合ってるのかマウスピースの方が合っているのかどちらがより適していると言う事はあるのでしょうか?と言う質問がありました。

そうですねよくある質問です。成人の方の場合多くの場合は、マウスピース矯正、インビザラインなどを希望される方が多いです。それはあなたも何となく想像がつくと思いますが、針金が目立たなく見た目的に良さそうと言うことです。後は歯磨きもそんなに大変そうじゃないし、とか、痛くなさそうだし。このような意見がよく聞かれます。一方で成人の方でも、私はワイヤー矯正の方がいいですと、希望される方もいます。

それでその人にどうしてあなたはワイヤーの方がいいと思われるのですか?と聞くと、食事の準備とかしたときに味見をするのだけれども味見をする際にいちいちマウスピースを外したりとか何か自分にはめんどくさい気がする。との事でした。マウスピース矯正の場合は、毎日24時間のうち少なくとも20時間以上は装着していることが必須です。そうするとマウスピースを外して良いのは4時間と言うことになるのですが、安全域を考えれば22時間は見ていたほうがいいと思います。

それでどんな時にマウスピースを外すのか、と言えば、まずは歯磨きをする時、です。毎日3回歯磨きすると思うのですが、その際は当然マウスピースを外して自分の歯を全て磨きます。これもし仮に1回歯磨き15分、ちょっと多めに言っていますが、かかったとして3回やったとして45分外していると言う計算になります。そして後、食事1日3回外したとして食事の時間が仮に1回20分だったとします。そうするとそれで1時間ですね。合計1時間45分と言うことになります。これなら確かに22時間以上入れていてとても安全なようにも思います。

しかしどうでしょう?途中でお茶飲んだりちょっとコーヒー飲んでお菓子少し食べてなんて時間もあると思いますそうするとやっぱりそこにプラス30分ぐらいはなんだか外しそうに思いますよね。さらにですね、もし週末に今日は友達とレストランでご飯を食べるなどと言う状態になった場合、1時間は外してますよね、多分。もしかしたら豪華なディナーをあなたが食べるとなると2時間そこで外すことになるかもしれません。2時間コースです。そうすると1日あたり絶対に必須として入れていておいた方が良い時間20時間ギリギリと言う状況が生まれる可能性があります。

このようなことを様々検討していくと、24時間のうち20時間以上本当に入れてられるような生活スタイルなのか、そしてもっと言うと自分自身が20時間ちゃんと入れていられるような性格なのか?のようなことを検討していくことになります。そしてなおかつ一方でワイヤーでも色々と検討しなければならないことがあり、それは針金を入れた状態で食事をしますし、その針金を入れた状態でその上から歯磨きを丁寧にすると言うことです。すなわち歯磨きの時間はもし5分かかるとすれば、プラス5分かかって10分かかるよと言うことです。しっかり歯を磨いてなければ虫歯になるリスクもあるでしょうし歯周病になるリスクも出てくると言うことなのです。その両者をよく想像してみて自分にはどちらが良いのかと言うことを考えてみる必要があるわけです。

今ここで書いた事は患者さん目線からの自分がどちらに合っているのかと言う話です。すなわちドクターからどちらがあなたの場合は良いのかと言う話ではないです。

ここ重要です。

自分の生活やスタイルや、自分の性格、今まで自分がどんな行動してきたと思うか、また今後の自分の仕事や余暇においてどのような状況でいたいのか。そのような自分自身のパーソナルな見地からどうしたら良いかと言う話をしているのです。

そしてその自分の意見としてはどうだと言うことを一応踏まえて、次回医学的にドクターから見てどうなのかと言うことも考えなくてはいけないのでその点についてさらにお話をしていきたいと思います。

Beautiful smile and white teeth of a young woman.

矯正治療とマウスピース矯正

2023年6月29日

先日親子で矯正治療を受けたいと相談された方がいました。

娘さんはワイヤーをつけるのはどうしても嫌で自分は絶対にマウスピースがいいとおっしゃられていました。一方お母さんのほうは食事の準備などいろいろあるし取り外しよりも針金をつけていたほうが楽だと思うから私はそっちがいいと。

インビザライン矯正(マウスピース矯正)とは

インビザライン矯正と言うものがあります、あなたは聞いたことがあるでしょうか?

マウスピース矯正の1種で半透明色のマウスピースをはめて歯を動かしていく方法です。マウスピース矯正は様々なタイプがあり、そのうちの1つがインビザラインと言う名前です。

この矯正方法は今までの針金を用いる矯正方法と違い、基本的にはお口の中に針金をつけたりをしないで歯を移動させていきます。そうなると今まで針金をつけることがとても嫌だなぁと思ったり、針金が付いていて歯磨きがとても難しいと感じたり、あるいは歯磨きが不十分で金具や矯正器具のキワか何かが虫歯になってしまったり、歯周病になったりなど、そのような点を考えると、有利かもしれません。

そして何よりこのマウスピース矯正を選ばれる方の最大のポイントは半透明色でそれをはめてみても一見他人から見てあまり目立たない、すなわち見た目です。中学生など針金をつけていることを他人に見られたくない、自分はそんなにを気にしていないがもしかしたら人から見てどう思われるのかとても不安である、どうしても気になってしまう、など様々な心理的な理由で針金をつけずにできればマウスピースでできるならそうしたいと言う人が結構いたりするものです。

インビザライン矯正(マウスピース矯正)のデメリット

このマウスピース矯正の最大の特徴の1つは目立たないと言う事なのですが、もちろん弱点もあります。少しそれに触れたいと思います。

今から言う事はとても当たり前のことなのですが、その当たり前のことが実際想像がつかない方が結構いたりするので、よくそれを充分理解した上でマウスピース矯正を選ぶべきです。

毎日20時間以上、装着しなければならない

マウスピース矯正はマウスピースをはめていなければ歯は動きません。マウスピースは1日24時間のうち20時間以上は必ずはめている事ではじめて歯が動くとされるという矯正方法です。1日のうちほとんどでマウスピースをはめていると言うことです。仕事があれば会社に行ってもはめている、学校に行くのであれば学校でもずっとはめている。

逆にどんな時に外して良いのか、それは歯磨きをする時とご飯を食べる時です。そうすると1日のうちに歯磨きの時間とご飯の時間がどれぐらいあるかと言うことになりますが多分通常の生活を送っているのであればそれはせいぜい2時間の範囲内ではないでしょうか。そうすると24時間のうち22時間はマウスピースをはめていられるはずです。

そう考えると必ず20時間以上はめている事はできそうなのですが、それでも人間ですので、なんとなく外していたとか、油断してはめるのを忘れていたとかいろんなことが起きるわけです。そうすると歯は予定通りには動かなくてイマイチの結果になってしまいます。

細長い小さいスティックを1日5分程度噛む必要がある

マウスピースを馴染ませるために細長い小さいスティックを噛む、時間にして1日5分程度なのですが、毎日繰り返すと言う時間があります。これは夜とかに家で5分ほどそのスティックを噛んでもらいマウスピースを十分に馴染ませることを繰り返し行っていきます。

もしこれをやっていないとマウスピースのはまりがいまいちで、なんとなくずれていき、1ヵ月2ヶ月と経てばやがて大きなズレになっていくわけです。そうすると予定通りには動かず残念な結果になってしまいます。

このスティックを噛むと言う作業はそんなに難しいことでは無いのですが、逆に簡単だからこそサボってしまってはとても残念な結果になるのです。毎日5分、これを仮にまとめて1ヵ月分をまとめてある日24時間ずっと噛んでたよという日が1日あったとしても、それでは全く意味がありません。毎日コツコツと続ける事が大事なんです。

繰り返しいます、とても簡単なことです、誰でもできるでしょう。やれと言われれば、ほとんど誰でもできるのですが、簡単だからこそついつい「まぁいいか」と思って明日にまた伸ばし明日に伸ばし、そしてついに1週間やっていなかった、1週間も経つと0.2ミリほどマウスピースの入りが悪くなっていてちょっとずれているかもしれない、どうしようということがやがては大きな誤算になっていきます。

まとめ

このマウスピース矯正は大人の方が自分でお金を払って受ける場合には割合真面目に入れていることが多いですが、子供の場合は親にやれと言われてやっている子もいるので、そうなると成果がいまいちな場合もあったりもします。また少数ですが大人でも真面目に入れてなくてなんとなくで終わってしまったと言う人もいます。

矯正治療はアメリカやヨーロッパなどの製品や技術を利用していることが多く、とてもそもそもが高額なシステムです。ですので必ず自分のためにしっかりやるんだと言うことを充分決意の上受けることをお勧めします。