先日インプラントをある患者様に行いました。
この方は右の下の奥歯に2本のインプラントを入れて、3本分のブリッジで仕上げる予定の治療計画でした。ただちょっと変わった点が1つありまして、それはこのインプラントを入れる場所にグラグラの歯が残っているまま、インプラントの治療を当日に迎えたのです。
どういうことか、本来であればまずグラグラの歯を抜きます。そして、グラグラの歯を抜いた後の歯茎が2ヶ月ほど経てば、だんだんと平らになってきて治ってきます。治ってきてからインプラントの治療が進んでいくわけです。
ですが、この患者様はこのぐらぐらの歯でも抜くと寂しいので、インプラントの当日に抜いて、その日にインプラントを進めることはできないかと言うことで相談があったのでした。
このような方法を抜歯即時といいます。何らかの事情があって、インプラントをやる当日に歯を抜き、そして抜いたところを可及的にその場できれいに仕上げ、かつその場所にインプラントを入れ、そこの穴部分の処理をして糸で縫って仕上げると言うやや複雑な方法です。このような治療法は前歯などではよく行われる方法です。前歯の場合は歯がないととても恥ずかしいとか、いろいろな状況が起こりやすいのでそうなるわけです。
しかし基本的な考え方としては、まず一旦歯を抜き歯茎を治す。歯茎を治してからインプラントをやると言う順番が妥当なのです。基本的なやり方の方が間違いがないからです。ですが、どうしても人間事情がありまして、いろんな気持ちがあるわけです。
この患者様の場合、明らかに先に抜いてもいい位、ぐらぐらで、かつやや奥なので、さほど目立つわけでもないので、先に抜いてしまってから基本的なやり方でやってもいいのかなと思いました。しかし、インプラントをやる相談の段階でどうしてもギリギリまで残して欲しい。自分でもこの歯が役に立ってるとはとても思えないが、それでもその抜歯即時の方法でできるならその方法を選択させてほしいと言う相談があったのです。
このような治療計画を立てる場合には、事前にCTや3D写真などの特殊の検査をしっかり行い本当にその方法がうまくいくのかを検討することになります。抜いた直後にどのような形の骨になるのか、インプラントと合うのか、そしてその凸凹が残っている状態で、インプラントを入れて、その凸凹をインプラントのオペをする。当日に凸凹の処理ができるか、骨がたくさん減ってしまうような事はないか、歯茎が安定するかなど様々なことを考慮していきます。あるいは痛みが強く出たりしないか腫れたりしないか感染が起きないか。
この方法、抜歯即時はすべての患者さんにできるわけではありませんですので、必要な時だけ行う。あるいは抜歯即時をした方が治りが早く時間のロスも少ない、骨の吸収も少ない、と言うような場合が5%位の症例にはあるので、そのような場合はそれをこちらから提案していることもあります。
このインプラント手術、特に問題なく終わりました。抜歯した直後にインプラントを入れたのですが、インプラントの埋め込んだ安定感もがっちりとしていって安心できる状況でした。今後最終的に歯が入るのはまだ3ヶ月ほど先になるかと思いますが、私自身、かぶせものが入って、自然な噛み合わせの歯になることが今から待ち遠しいです。
インプラントの治療と言うのは、長い時間の中で自分の歯を悪くしてしまい、歯を抜かざるをを得なくなったという歴史あっての話です。その人なりの歴史の中での気持ちというものがあるので、単に技術だけの問題でもなく、その気持ちの流れを考えてやっていくということがとても素晴らしい医療だと思っています。
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インプラント治療をする前の抜歯について
2024年3月17日先日、右上の歯をある患者様は抜きました。右上の歯だけがだんだんぐらぐらしてきて悪く、いつかもうこの歯はダメになると思っていたそうです。
その患者さんは本人の話によると、今までこの歯を2回かぶせ直したことがあるそうです。そうして今まで何とか頑張ってきたのだが、もうかなりぐらぐらするのでもう限界だと思う。これを抜くことになったらどうしようということで抜く前、以前に既にどうすべきかと言う相談を受けていました。そして相談の中で今度これがダメになりそうになったらもうインプラントで行きたいと言うことに話としてはなっていました。
そうこうしているうちにこの本人の気になっている歯の上のかぶせ物だけがある日突然取れたのです。患者様から連絡があり、歯の根っこだけが残っているが、この根っこがどんどん腐って顎が悪くなっていくのではないか、心配だから1度見てほしいとありました。そして急患で来てもらい、お口の中を見ると、やはり上の歯はなく根だけが残っていました。そして治療計画としてはこの根を抜いて、そこに一旦仮歯を入れる。仮歯はその歯を抜いた当日入れる。そのすることによって、歯が全くないと言う期間をできる限り少なくすると言う方法です。
そして歯茎が治った頃インプラントをする。治る期間としては、おそらくおよそ2ヶ月ぐらい後になる。インプラントを入れた後、歯茎や骨に十分なじむ。さらに2ヶ月ほど待って後、上にかぶせものを入れると言う流れとなりました。
もちろんこれはあくまでおおよその流れであり、骨や歯茎の治り状態によっては、その期間はさらに長くなることも考えられます。
そして根を抜いたのですが、その時に抜歯した穴にコラーゲン用の特殊な薬を入れました。薬といってもゲルのようなものです。この薬をなぜ入れるか?それは、歯を抜いたままだと骨や歯茎は多少減っていき、そこのところが抜いたところがくぼんでしまうのです。この凹みを最低限に抑えるためです。理想はもともとあった骨や歯茎のボリュームと同じ位丸くふっくらと膨らんでいる状態になることです。
しかしそのような事はまぁまずあり得ません。20歳の人の歯を抜くのとは状況が違いますから。細胞の再生力などを考えると、どうしてもロスするわけです。そのロスをできる限り抑えるために抜いた直後に特殊なゲルを入れたり、もしくは場合によっては本人の血液を採取して、血中の白血球などの成長因子だけを取り集めた凝縮した自身の活性因子となる凝縮した血液を入れると言う方法もよく行っています。このような方法をPRFと呼んでいます。このPRFを用いた方法は、抜歯する時点でも既にこれをやるべきであると言う判断もありますし、先ほど書いたような薬のゲルを入れると言う方法もあります。インプラント治療する際には、事前に歯を抜いた後にインプラントをするということが決まっていれば計画を立てることが可能です。
ですので、もしインプラントにするかもと言う可能性がある場合には、早めに相談を受け、骨や歯茎が減らないような対策を考えることが得策です。